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第470話

役所では、木幡刑部卿が焦りを隠せずにいた。「親王様、丹治先生をお呼びになった理由は何なのです?先生は死者に触れてもいない。どれほどの医術をお持ちでも、検死官ではありませんぞ」

玄武は全く慌てる様子もなく答えた。「焦らずとも。木幡刑部卿、これほど大きな騒動を引き起こした事件だ。もし我々が慎重さを欠き、無実の者を罰することになれば、天下の非難を免れまい」

木幡刑部卿は長年の経験から、この事件に些細な疑問があることは分かっていた。しかし、犯人の自白があり、人証物証も揃っている。何を再調査する必要があるというのか。

「時間の無駄です。犯人を一日でも長く生かすことは、被害者たちへの冒涜です」

「甲斐府知事の判決も秋後の処刑だ」玄武は言った。「今はまだ四月。文書の往来も早馬を使えば一月もかからん。何を焦る必要がある?」

「丹治先生はいつ来られる?随分待たされているが」

木幡刑部卿は不機嫌そうに脇に座った。北冥親王に対して激しい言葉は避けたものの、その表情は明らかに不満げだった。

二人の刑部輔は既に震え上がっていた。木幡刑部卿は娘が定子妃として皇帝の寵愛を受けているため、北冥親王を恐れる必要はない。しかし、彼らには寵妃となった娘などいないのだ。

木幡刑部卿の言葉が終わって間もなく、刑部大輔の今中具藤が丹治先生を案内して入ってきた。

丹治先生は背は低かったが、その威厳は圧倒的だった。入室するなり、まず木幡刑部卿を冷ややかな目で見つめた。木幡刑部卿は慌てて立ち上がり、先ほどまでの怒りと焦りを一変させ、謙虚で従順な態度を見せた。「丹治先生、本日はご足労いただき、誠に恐縮でございます」

「木幡刑部卿をお待たせして、申し訳ございません」丹治先生は淡々と言った。

「いえいえ、とんでもない。先ほどの態度は先生に対してではございません」木幡刑部卿は慌てて弁解した。丹治先生の恩を受けている身だ。母が回復できたのも先生のおかげ。さもなければ、今頃は喪に服していたはずだった。

「私に対してでないなら、誰に対してですか?親王様ですか?」丹治先生は座りながら尋ねた。

「いいえ、とんでもございません」木幡刑部卿は必死に取り繕った。「あちらの者たちにです」

指さされた左右の刑部輔たちは愕然とした。彼らは一言も発していなかったが、上司の尻拭いは彼らの仕事。すぐに頭を下げて言った。「は
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