さくらは思わず笑みを漏らした。しかし、事情をはっきりさせる必要があった。紫乃に頼んで寧姫を連れ戻し、椅子に座らせた。「会ったことあるの?」さくらが尋ねた。寧姫の瞳が輝きを増す。「はい。遊佐さんが皇后様に挨拶に来たとき、お見かけしたんです」「どこが好きなの?」「わかりません。ただ、見た瞬間に好きになってしまって......」さくらは斎藤六郎の容姿がどんなものか知らなかったが、一目惚れというのは外見と大いに関係があるものだと思った。「そう。じゃあ、お姉さんが人を遣わして聞いてみようか?」「それは私の一存では決められません。母上と姉上にお任せします」寧姫は口元を押さえきれずに上げた。「でも、まあ、聞いてみてください」姫の結婚話なら、本来なら聞く必要もない。誰かを気に入れば、勅命一つで決まるはずだ。しかし、さくらは斎藤六郎の意思を知りたかった。もし皇室の威光に屈して仕方なく結婚するのなら、婚後の生活も幸せにはなれないだろう。皇后の考えは分かっていた。斎藤家の子弟はみな優秀だが、姫と結婚させるなら、一番目立たない三男家の齋藤六郎が最適だと。他の有望な子弟を無駄にしないためだ。しかし、恵子皇太妃は満足していなかった。斎藤家との縁組には賛成だが、できれば五男がいいと思っていた。六郎は三男家の人で、あまり出世の見込みがない。しかも、六郎は特に才能があるわけでもない。学問でも際立たず、毎日あれこれいじくり回しているだけで、あまり役に立ちそうにない。そのため、さくらが尋ねたとき、恵子皇太妃は沈黙した後こう言った。「五郎では駄目かしら?」「寧姫は六郎さんが好きなんです」「好きだからって何になるの?好きなんて一時的なもの。一緒に暮らせばすぐ飽きるわ。やっぱり、見栄えのする婿を迎えないと」「でも、姫の夫君は名誉職程度で、大きな役職には就けません。寧姫と心が通じ合うことの方が大切です」恵子皇太妃はまだ納得していない様子だった。「ほら、他の親王が娶った斎藤家の娘なんて素晴らしいでしょう。本家の嫡出だもの」さくらは穏やかな声で言った。「斎藤家の娘がそんなにいいなら、私はだめなんですか?比べるなら、榎井親王様が玄武様に及ぶわけがありません。玄武様がいるからこそ、どの妃も貴方を越えられないのです。貴方が彼女たちと比べるなんて、
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