電話を切った後、龍介は心配そうな声で言った。「どうしたんだ?顔色があまり良くないぞ」紀美子は力なく携帯を机に置いた。「彼の携帯が見つかったって」龍介は少し眉をひそめて言った。「他には何も知らせはなかったのか?」「なかった」紀美子は首を振り、鼻をすすった。「あれだけの時間が経ったのに、彼に関する情報は全くない」龍介は小さくため息をついた。「どう慰めればいいのかわからないな」紀美子は無理に笑顔を作った。「大丈夫、私は大丈夫だから」「うん」30分後、晴がTycに到着した。龍介が立ち上がろうとしたその時、晴がドアを開けて入ってきた。二人はドアの前で目を合わせた。龍介を見た瞬間、晴は眉をひそめた。どうして吉田龍介がここにいるんだ?こんな遠くから来て、紀美子と商談でもするつもりか?そう考えながら、晴は疑いの目で紀美子を見た。紀美子が目を赤くしているのを見て、晴のさらに驚いた。龍介は礼儀正しく晴に手を差し出して言った。「こんにちは、田中社長」晴は視線を戻し、手を差し出して言った。「吉田社長、わざわざ遠くから来られたのは、入江社長と商談ですか?それとも……」龍介は淡々と笑って言った。「田中社長、私がここに来た目的は何だと思いますか?」「知るか」晴は冷たく言った。晋太郎が去ったばかりなのに、紀美子はもう龍介に心を寄せたのか?あまりにも早すぎるだろ!晴の態度が良くないことを察した紀美子は、立ち上がって言った。「晴、先にドアを閉めてから話しましょう」晴はドアを閉めたが、そのまま立ち尽くして二人を見ていた。紀美子は深くため息をついて言った。「龍介君、私たちが話し合っていたこと、晴にも伝えてもいいと思う」龍介は頷いた。「君が話して」紀美子は二人に水を出してから、ゆっくりと晴に自分たちが下した決断を説明した。晴はそれを聞いて目を大きく見開いた。「MKを買収するだって?!一体いくらかかるんだ?!」「これは金の問題じゃない」龍介は言った。「それなら、何の問題だ?」晴は笑って言った。「まさか紀美子のために戦っているだけだと言いたいわけじゃないだろうな?そんなバカな話があるか!」「……違うの、晴。あなたは晋太郎の努力
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