入江紀美子は「おやすみ」と返信して、携帯を置いてから計画に着手した。このまま沼木珠代の所に行くのは無理だ。エリーは用心深いので、絶対に盗聴されるだろう。行くなら、エリーに悟られずにやらなければならない。紀美子は、いろいろ考えた末ようやく方法を思いついた。彼女は再び携帯を手に取り、渡辺瑠美にメッセージを送った。「瑠美、睡眠薬を少し買ってきてくれない?」「また自殺を考えてるの?」瑠美はメッセージを見て驚き、すぐに返信した。「違う、ちょっと別のことに使いたいだけ」紀美子は慌てて説明した。「自殺じゃなければいいわ。夜に例の場所に置いておくから、取りにきて」紀美子は暫く考えてから、もう一通のメッセージを送った。「瑠美、この間墓参りに行ったとき、お兄ちゃんを見かけた気がするの」瑠美はそれを見て画面に釘付けになり、随分経ってから返事した。「あの時に?見間違えじゃない??彼の顔を見たの?」「見えたのは後ろ姿だけだったけど、他に誰がうちの母の墓参りに来るっていうの?彼以外に考えられないわ。あの時私は確かにはっきりと見たわ。追いかけたら、すぐに消えちゃったの」「……まさか、妄想症にでもかかったんじゃないよね?とても受け止めがたいかもしれないけど、兄はまだ行方不明よ」「あんたも、彼が死んだと思っていないじゃない。行方不明だって!」「まあいいわ。どう思うかは自由だけど、とりあえず12時を過ぎたらものを取りにきて」紀美子も、それ以上何を言っても意味がないと分かっていた。そのため、彼女はただ「分かった」とだけ言った。翌日。土曜日。紀美子は早起きして朝食を食べに階下に降りた。ダイニングルームで、エリーが使用人と話していた。紀美子を見て、彼女は一瞬で警戒し、トレーを持ってキッチンに入った。紀美子がテーブルに着くと、使用人が朝食を持ってきてくれた。食べようとした時、エリーが牛乳を持ってキッチンから出てきた。牛乳を見て、紀美子はとあることを思い出した。エリーは毎日欠かさず牛乳を飲んでいる。朝食、昼食、そして夕食の時に必ず1杯飲んでいた。紀美子は突破口を見つけた気がした。朝食を食べ終えると、エリーはリビングにいて、沼木珠代は2階の部屋の掃除を始めた。紀美子はキッチンに入
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