由美が棒を手に持ち、立っているのを見た憲一は、目を丸くして驚愕した。彼女が背後から自分を襲うなんて、まったく予想していなかったのだ。「由美?」彼女は一体何をするつもりなのだろうか?憲一の頭は混乱していた。由美はすぐさま怯えた様子を装い、どもりながら説明した。「わ、私は彼を叩くつもりだったの……」この言葉を聞いた翔太はさらに怒りが込み上げ、憲一が油断している隙を突き、背後から彼を蹴り倒した。憲一が地面に崩れ落ちた瞬間、翔太はすかさず飛びかかり、その上に乗って拳を振り下ろした。由美の一撃で呆然となった憲一は、一瞬身動きが取れなくなった。部屋の中では、越人が監視カメラを見ながら眉をひそめていた。「どういたしましょうか?止めに行ったほうがよろしいかと思いますが」このままだと憲一が殴り殺されかねない。「引き離せ」圭介はチラリと見て答えた。越人はその言葉を受け、外へと向かった。彼は翔太を憲一から引き離し、厳しく警告した。「これ以上手を出すなら、ここから追い出すぞ!」それでも翔太は怒りを収められず、地面に倒れている憲一に唾を吐き捨てた。その間、由美はずっとその場に立ち尽くし、二人の喧嘩をただ見ているだけだった。その様子を見た越人は不思議そうに尋ねた。「憲一が殴られてるのに、助けないのか?」「びっくりして動けなかったの」由美は冷淡に答えた。越人はそれ以上反論することもできず、ただ由美が憲一に対して冷たい態度を取っているように感じた。「とにかく、みんな中に入ろう」そう言い残し、越人は先に屋内へ戻った。憲一は全身が痛みに襲われていたが、それでも由美の手を引いて言った。「行こう」最後尾に立っていた翔太は、憲一と由美が手を握り合っているのを見て、目を真っ赤にしていた。由美は振り返り、翔太のその姿を見た。彼の悲しそうな表情を見ると、なぜか胸が締め付けられるような感覚に襲われた。まるで自分にもその感情が伝わってくるような気がした。翔太が由美の視線を受け、前に進もうとしたが、由美はすぐに視線をそらし、憲一の腕を取って心配そうに声をかけた。「大丈夫?」「大丈夫」憲一は首を振って答えた。由美の心配を受けて、体の痛みさえ感じなくなった。その光景を見た翔太は、上げかけた手を再び下ろし、耐えられない思いでそ
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