写真が床に落ちた。香織は下を向いて見た。写真に写っている人物を見て彼女は呆然としていた。しばらくして、ようやく我に返った。圭介のノートの中に、どうして彼女の写真が挟まっているのだろう。香織は身をかがめて写真を拾い、何度も確認したが、間違いなかった。彼女は急いで写真をノートに戻し、さらにノートを素早く机の上に置いた。そして、振り向いて書斎を大股で出て行った。彼女は速足で歩き、ドアの前に立っている恵子に気づかなかった。「香織、大丈夫?何か慌てているようだけど」恵子は心配そうに尋ねた。「な、何でもないわ」香織は恵子を見て表情を整えた。「誰かがあなたを訪ねてきているわよ」恵子は言った。誰かと尋ねようとしたその時、彼女はリビングに立つ憲一の姿を見つけた。「今日は早めに仕事が終わったから、先に来た」憲一が言った。香織は恵子と佐藤に、双を連れて近所で遊んでくるよう頼んだ。「憲一と少し二人で話したいの」「分かったわ」恵子は双を抱き上げ、佐藤とともに外へ出て行った。彼らが去った後、香織はリビングのソファに腰を下ろした。「座って」憲一も腰を下ろした。二人は一瞬視線を交わしたが、どちらも言葉を発しなかった。沈黙を破ったのは香織だった。「越人を別の場所に移して。できるだけ秘密裏に、誰にも知られない場所に」「なぜだ?今の場所じゃダメなのか?」「誰かに害されるかもしれないから。安全な場所に移したほうがいいわ。もし適当な場所が見つからないなら、文彦に頼んでみる。彼はもう引退しているけれど、秘密裏に病室を手配するくらいならまだできるはず……」「俺がやる」香織の言葉はまだ終わらないうちに、憲一が言葉を遮った。彼は真剣な表情で香織を見つめ、低い声で言った。「今日来たのは、由美のことについて話があるからだ……」「由美を見つけたの?彼女はどこにいるの?会わせてほしいわ。翔太は彼女を探すために、うちのすべてを犠牲にしたのよ!彼女に会えたら絶対に叱りつけてやるわ。なぜ逃げ出して私たちをこんなにも心配させたのか」香織は興奮と苛立ちが入り混じる声で言った。「矢崎家のすべて?」憲一は、矢崎家がどれほど損失を被ったか知っていたが、まさかそこまでとは思っていなかった。「父さんが私たちに残してくれた資産は、
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