All Chapters of 植物人間だった夫がなんと新婚の夜に目を開けた: Chapter 531 - Chapter 540

とわこは、この小さなことが原因だとは思いもしなかった。「もちろん、ママは怒らないよ。でも、こういう行為は礼儀に欠けているわね」とわこは根気よく教えた。「ママが帰ってきてから、開けてもいいか尋ねるの。ママが『いいよ』と言ったら、その時に開ければいいわ」「うん、ママ、もう開けてもいい？」「いいわよ！」とわこが荷物を手に取ると、表情が突然険しくなった。「レラ、これは誰から送られてきたかも、中身が何かもママは知らないの。だから、ここはママが開けるわね」彼女は中身が怪しいもので、子供が驚いてしまうのを恐れたのだ。「えぇ……」レラの好奇心はますます高まった。とわこは小さなハサミを取り出し、テープを丁寧に切り始めた。その時、家政婦が近寄ってきて尋ねた。「とわこさん、マイクは今夜帰って夕食をとるんですか？」とわこは答えた。「彼は今夜、用事があるから、帰らないわ」「分かりました。では、お料理を食卓に並べますね」「ええ、お願い」とわこは荷物を開け、ハサミを置いた。その箱の中から冷たい空気が漏れ出してきた。中には冷却パックが入っている。彼女は緊張を覚え始めた……普通、冷却パックが入っている荷物は生鮮食品だ。しかし、この箱はそれにしては小さすぎる。冷却パックを取り出した後、中にはさらに小さな黒いテープで巻かれたものがあった。とわこはそのテープを持ち上げ、開けた――「ママ、それ、何？」レラは顔を上げ、両手でとわこの服の裾を掴んでいた。「うっ！」突然の吐き気が襲ってきた！とわこは箱を手に、慌てて洗面所に駆け込んだ！「ママ、どうしたの？！」レラは怯えて泣き出した。蓮がすぐに彼女を抱き上げた。「大丈夫だよ、ママは今、赤ちゃんがいるから、時々吐き気がするんだ」それを聞いて、レラは泣き止んだ。騒ぎを聞きつけた家政婦が、慌てて洗面所へ向かった。「とわこさん、大丈夫ですか？」とわこは洗面所に入ると、ドアの鍵をかけた。普段なら、彼女は家政婦に返事をするだろう。しかし、今は何も言葉が出てこなかった。彼女は完全に怯えていた。黒いテープの中には、切り落とされた指があった。その指は、切られたばかりのようで、まだ血がついていた。とわこは箱を抱え、震えが止まらなかった。箱の中には、MP3のようなも

家政婦とボディーガードも呆然としていた。「とわこさん、こんな時間にどこへ行くんですか？」 とわこは全身の神経が張り詰め、平静を装うことも、子供たちに笑顔を見せることもできなかった。彼女は血走った目で蓮を見つめ、「蓮、妹をしっかり守ってね」と言った。蓮はいつも強かったが、今の母親の様子には怯えてしまった。いくら早熟とはいえ、彼もまだ五歳の子供に過ぎない。彼はとわこの服の裾を掴み、寂しげで不安そうな声で尋ねた。「ママ、どこに行くの？」普段なら、とわこはたとえ善意の嘘でも、まず子供たちを安心させるために説明をするだろう。しかし、今は全身が凍りつき、頭もまともに働かない。ただ一つの思いが頭を支配していた——アメリカへ行って真を助け出さなくては、と。どんな危険があろうと、どんな代償が必要でも！真は彼女のせいで囚われている。もし彼女と出会っていなければ、あんな非道な拷問を受けることもなかっただろう。あの血まみれの指は鋭い刃のように彼女の心を突き刺していた。……タクシーが門の外に止まった。マイクは車を降りる前に、レラの悲痛な泣き声が耳に入ってきて、眉間に深い皺が寄った。彼はとわこがスーツケースを持って出ようとし、子供たちが必死に彼女にすがっているのを目にした。マイクの胸が締め付けられ、大股でとわこの元に駆け寄り、彼女の手からスーツケースを奪い取った。「とわこ、何を考えているんだ？！子供が泣いてるのが聞こえないのか？！」とわこのスーツケースを横に投げ捨て、両手を腰に当てて問い詰めた。「一体何があったんだ？例の荷物……荷物はどこにあるんだ？」とわこは彼を見ずに、そっけなく横に歩き出した。マイクも彼女の後を追いかけた。「その荷物は午後1時に受け取ったの。24時間以内にアメリカに行かなければ、彼らは真を殺すって言ってる！」とわこの瞳には暗い影が漂っていた。「もう時間がないの……お願い、止めないで！」マイクは思いのほか深刻な状況に驚いた。「俺も一緒に行くよ。家で子供たちの世話をしろなんて言わないでくれ、とわこ。この連中はただの悪党じゃない！君一人で行くなんて自殺行為だ！君が死ぬだけならまだしも、お腹の子まで一緒に巻き込むつもりか？！」とわこの目は真っ赤に染まり、死にたくはないし、リスクも冒したくない

彼に何を話していたのか？ 彼女は今、どうしてもアメリカに行かなければならなかった。彼が賛成しようと反対しようと、彼女の決意は変わらない。それに、彼をこの件に巻き込みたくはなかった。彼女は深く息を吸い込み、再び歩き出した……あと10メートルも歩けば、曲がり角がある。その角を曲がってしまえば、彼には彼女の姿が見えなくなる。「とわこ！」奏は彼女が一度も振り返らずに歩き出すのを見て、血が瞬時に沸騰した！彼の瞳は血走り、検査ゲートに向かって突進した……が、警備員がすぐに彼を制止した。「とわこ！振り返って！」彼は混雑する空港のロビーで、プライドも面目も捨て、鋭く叫んだ。「振り返って！俺を見てくれ！」とわこの足は重くなった。長い廊下の角に辿り着くまでの10メートルの距離が、彼女のすべての力を消耗させた。彼の視線から離れると、彼女はガラスの壁にもたれ、声を押し殺して泣いた。「マイク、彼を連れて行って！」彼女は顔を手で覆い、絶望に打ちひしがれながら言った。マイクは眉をひそめ、困った表情を浮かべながら言った。「彼は俺の言うことなんか聞かないよ。君もこの状態では無理だ。今、子遠に電話してくる！」マイクは子遠に電話をかけ終わると、とわこの手を握り、彼女を連れ出した。……子遠が空港に到着すると、人混みの中ですぐに奏の姿を見つけた。彼は4番ゲートに立っていた。とわこはすでに飛び立っていた。彼の心も、魂も、彼女と一緒に飛び去ってしまったかのようだった。こんな風に見捨てられるのは、これが初めてではない。五年前、彼女は同じように去っていった。彼がどんなに哀願しても、彼女は微動だにしなかった。まさか五年後も同じことが起きるなんて。今回は別れではないと知っていても、彼の心には同じように深い傷が刻まれた。彼は彼女に会うために空港まで急ぐあまり、数え切れないほど信号を無視してきた。それなのに、彼女は彼のために一度も振り返ろうとしなかった。どうして彼女はこんなにも残酷でいられるのだろうか？子遠は足早に彼のそばに近づき、小声で言った。「社長、もう遅いです。家までお送りいたします」彼は子遠の声を聞いて、硬直していた身体がようやく反応を見せた。彼は深い闇に沈むような瞳で子遠を見つめた。「彼女がどう

蓮の言葉が終わると同時に、奏と結菜が別荘から出てきた。父と息子の目がふと合うが、蓮は気まずそうに目を逸らした。蓮はまだ未成年であり、保護者なしでは飛行機に乗ることができない。そうでなければ、彼はここには来なかっただろう！今はただ、少しでも早くアメリカに行って、ママのそばに近づきたいと思っている。「蓮！レラ！お兄ちゃんが私たちをアメリカに連れて行ってくれるって！」結菜は二人の前に駆け寄り、嬉しそうに声を弾ませた。「もうすぐとわこに会えるわ！」…… アメリカ。 首都空港。とわこは空港を出ると、黒い服の男二人に黒いビュイックに連れて行かれた。マイクは遠くからその車のナンバープレートを撮影した。今は真を救出しておらず、まだ敵に警戒されないようにする必要があるのだ。黒いビュイックがすぐに視界から消えると、マイクの携帯に子遠からのメッセージが次々と届いた。彼は電話をかけると、子遠は即座に電話に出た。「社長が結菜と二人の子供を連れて、プライベートジェットでアメリカに向かってるんだ」マイクは眉を上げ、片手でこめかみを押さえた。「知らない人が見たら、彼が旅行に来たのかと思うね！」「お前、もう皮肉はやめてくれないか？お前ら、昨夜は何をしてくれたんだよ？社長を空港に一人で置き去りにしやがって！」子遠は怒りを爆発させた。「俺には本当に理解できないよ。あんなに素晴らしい男が、どうしてわざわざとわこに縛り付けられているんだ？」「言いたいことがあるなら冷静に言え！とわこを侮辱するな！」マイクも腹を立てた。「真が彼女のせいで拉致されたんだぞ！彼女は既に十分に辛い思いをしている。ここはアメリカだぞ、日本じゃないんだ。奏が好き勝手にできる場所じゃない！彼を連れてきたら、一緒に死にに行くようなもんだろうが！」子遠は息を飲んだ。「死ぬだって？そんなにヤバいのか？」「血まみれの指が彼女に送りつけられたんだよ！真の指だ！」マイクは日本にいる間はこのことを隠していた。奏に知られると、出発を止められる可能性があったからだ。子遠は「なんてことだ！真が一体何をしたってんだよ！」と驚いた。「真はただの真面目な人間で、何かを起こすようなタイプじゃない。彼女を狙う連中が、彼女を見つけ出す手段として真を使ったんだ」マイクは道端でタクシーを止めなが

「彼はどこだ？！」とわこはリビングルームに立ち、冷たく問い詰めた。 銀王は部下に目をやり、部下はすぐに人を連れてきた。 しばらくして、真が二人の男に引きずられて出てきた。 とわこの体は急に硬直した。彼女は自分の目の前の光景を信じられなかった！ 真は全身が血だらけで、顔も腫れ上がり、無傷の部分が一つもなかった。 銀王は肩をすくめて説明した。「三千院さん、感謝すべきだよ。部下がタイミングよく見つけなければ、このバカはもう崖から飛び降りて、粉々になって死んでいただろうね！」 崖から飛び降りる？！ 別荘の外には確かに崖があった。 真は本当に崖から飛び降りようとしていたのか！ 彼は彼女の身分がバレるのを避け、苦しみに耐えられず、飛び降りることを選んだのか！ とわこの涙が瞬時に溢れ出た。 「真さん！」彼女は真の元へ駆け寄り、彼を抱き上げた。「真さん！ごめんなさい！私のせいだ！」 真は動かず、すでに意識を失っていた。 とわこは彼を抱きしめながらしばらく泣いた後、すぐに気を取り直した。「救急箱！救急箱を持ってきて！」 銀王は部下に目をやり、部下はすぐに医療箱を持ってきた。 とわこは悲しみを押し殺しながら、彼の傷の手当てを始めた。 彼の傷を包帯で巻いた後、彼女は目を赤く染め、歯を食いしばって銀王に言った。「彼を病院へ運ばせて！すぐに！すぐに！もし彼が死んだら、あなたが私を殺しても、私はあなたのために何もできない！」 銀王は面倒くさそうに部下に手を振った。 すぐに真は連れて行かれた。 「言っただろう、こいつが崖から飛び降りたがっていたから、こんなことになったんだ」 「黙れ！その程度の手段で私を脅せると思っているのか！今はあなたが私に頼っている立場だ！」とわこは頭が痛くてたまらなかった。「今は休ませて！明日、真の病状報告を持ってきてくれ。それから他のことを話そう！」 ……ガルフストリームG650のプライベートジェット機の中。 奏は目を閉じて、座席で休んでいた。 二日間寝ておらず、どんなに強い体でも、こんな疲れには耐えられなかった。 レラと蓮は心配そうな表情をしていたので、ずっと目を開けていた。 「お兄ちゃん、私、こんな豪華な飛行機に乗る