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第92話 彼女のトリ

美優も驚いて鈴楠を見つめた。自分のドレスもかなり綺麗だったが、鈴楠がドレスを纏って微笑むと、彼女の持つ気品と冷ややかな美しさがさらに引き立っていた。

智子は目を輝かせ、すぐにメイクアップアーティストに鈴楠の装いを整えさせた。 彼女は鈴楠の肩に手を置き、「最後のトリを飾ってよ」と頼んだ。

鈴楠に反論の余地を与えることなく、彼女はスタッフと出場順の調整を始めた。

鈴楠は唖然としていたが、美優は笑いながら前に進み、「そうよ、その通り。鈴楠は注目されるべき人だもの」と言った。

智子は美優を引っ張り、「あなたも手を抜かないで。あなたがオープニングよ」と告げ

た。

美優は驚いて「ああ?」と声を上げた。

ショーが始まると、全てがスムーズに進み、智子はフロントでその様子を見守っていた。

招待客も全員到着し、みんな挨拶を交わした後は、静かに着席してショーの開始を待っていた。

ステージ以外の周囲は真っ暗で、人の姿は見えなかった。これは場内の雑談がショーに影響しないようにするための演出だ。

音楽が流れ始め、ショーは順調に進んでいった。

急遽オープニングを任された美優だったが、彼女は全く動じなかった。内に秘めた自信が彼女を支え、失敗を恐れることはなかった。もともと美しい彼女は、登場したらすぐに観客の視線を集め、大きな反響を呼んだ。ドレスの美しさに対する驚きと、モデルである彼女への賞賛が入り混じり、美優はゆっくりと舞台を後にした。

彼女は目をさっと二列目に向け、二人の女が座っているのを見つけ、唇に微笑みを浮かべながら去って行った。

緊張と期待、そして続いて観客を引き込むような素晴らしいテーマが展開されていた。

誰もが息を呑んでショーを見つめ、デザインの一つ一つを見逃すまいとしていた。

美優は階段を駆け上がり、二階へ。そこでは鈴楠の長い髪がすでにアップにまとめられており、白いスワンのような首が露わになり、とても美しかった。彼女の出番まではまだ時間があったので、鈴楠は焦らず待っていた。

「誰に会ったと思う?」

鈴楠は少し顎を上げ、冷ややかな目で答えた。彼女はすでに気づいていた。瑛美と苑里だ。

二人は興奮した様子で見つめていたが、美優が先ほど舞台に立ったことには気づいていないようだった。そのため、まだ落ち着いているのだろう。

「なんで彼女たちがここにいるの?」
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