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第90話

東雲は呆然とした。

よく考えてみると、すぐに恥ずかしさが込み上げてきた。

1年前、雅之が突然失踪し、二宮家全体が大混乱に陥った。雅之の元部下たちは必死に探したが、見つからなかった。

当時の雅之の状況では、誰かが彼を害しようと思えば簡単だっただろう。

その後、雅之が自ら東雲に連絡を取り、過去1年間の生活を知らせてきた。

里香が雅之を家に連れ帰ったのだ。

里香は雅之に恩があった。

夏実も雅之に恩があった。

しかし、東雲は夏実のことだけを覚えていて、里香のことを忘れていた。

東雲は手を挙げ、自分の顔を叩いた。「私が間違っていた」

月宮は「俺に謝っても意味がない。里香に謝れ。彼女が許してくれれば、雅之の方も問題ないだろう」と言った。

「わかった!」

そう言って、東雲は電話を切った。

「ちょっと、まだ話してないことが…」

電話が切られたのを見て、月宮は舌打ちした。「こいつは本当におバカだ!」

里香はそのままカエデビルに戻った。

広い平屋はがらんとしていて、里香はソファに座り、前をぼんやりと見つめて、心はどんどん沈んでいく。

まるで深淵に落ち込んでいるように、冷たさと暗闇が里香を覆っていた。

その時、里香のスマートフォンが震えた。スマートフォンを見ると、1億円の振込があった。

これは驚いた。振込人は雅之だった。

雅之は…里香の条件を承諾したのか?

さっきまで認めてくれなかったのに、どうしていきなり心を変えたのだろう?

男の心は本当にわからないものだ。

お金は手に入ったが、里香は嬉しくなかった。

これは里香の命を買うためのお金だった。

1億円を受け取るということは、彼女の命を雅之に売ったことを意味する。雅之は里香を盾にして夏実を守るだろう。

悲しい…

なんて悲しいことだ。

どうしてこんなことになってしまったのか?

里香は深呼吸し、かおるにメッセージを送った。

里香【酒、飲みに行かない?】

かおる【行く行く!】

二人はいつもの焼肉屋に行き、好物の料理を注文した。

「ねえ、どうだった?」かおるは心配そうに聞いた。

里香「私は今や百万長者になったわ」

「詳しく話して?」

かおるが驚いて聞くと、里香はビールを一口飲み、笑ってから事情を話した。

かおるは拳を固く握りしめた。

「里香ちゃんは無価値の宝物よ! 1億円で
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