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第442話

雅之が振り返ると、冷たい表情の里香と目が合った。そのくっきりとした目元は、今やまるで氷のように冷ややかだ。

もし今「出ていくよ」と言えば、里香は迷わず席を立つだろうな、と雅之は感じた。

彼は少し沈んだ表情で小さくつぶやく。「周りなんか気にしなくていい」

里香は彼を見て、口角を少し上げて笑ったが、その笑顔は目元には全く届いていなかった。「雅之、私がこうなったのは全部あなたのせいよ。せめてお金くらいで償ってくれなきゃ」

雅之は少し眉をひそめ、「......お前、金しか頭にないのか?」

里香は肩を軽くすくめ、「愛なんてもういらない。だったら、お金くらい欲しいでしょ?」

そう言われると、雅之の顔色がさらに険しくなり、周囲に冷たいオーラが漂うのがわかる。

里香はふっと視線を外し、「ところで、おばあちゃんはどこ?」と聞いた。

雅之もその瞬間少し冷静さを取り戻し、彼の中に渦巻いていた感情も少し和らいだようだった。

愛なんていらない?

本当に、簡単に捨てられるものなのか?

雅之はそのまま里香を連れて階段を上がっていった。

2階の部屋に着くと、ドアはすでに開いていて、中には数人が集まっていた。月宮が二宮おばあさんの隣で、笑い話をしておばあさんを楽しませている。

「おばあちゃん」

雅之が部屋に入ると、里香も続いて声をかけた。「おばあちゃん」

二宮おばあさんは里香を見るなり、ぱっと目を輝かせ、手を振った。「お嫁さんだ!よく来たねえ!待ちくたびれちゃったわ!」

里香は歩み寄り、おばあさんの手を取り、にっこり微笑んだ。「おばあちゃん、私も会いたかったです」

二宮おばあさんはじっと里香を見て、急に心配そうに言った。「ちょっと痩せたんじゃない?うちの雅之、ちゃんとご飯あげてるの?もし彼がいじめたら、もう一緒に暮らさなくてもいいんだからね!」

里香は思わずくすっと笑った。「そうですね、もしそんなことがあれば、おばあちゃんに助けてもらいます」

二宮おばあさんもにこにこして、「もちろん、私がしっかり守るからね」と言った。

困った顔の雅之がぼそりと口を開いた。「もし彼女が僕と別れたら、おばあちゃんの大事なお嫁さんがいなくなっちゃうよ」

おばあさんは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに里香の手をぎゅっと握り、「それはダメ!お嫁さんがいないなんて困るわよ!離婚なんて許しませ
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