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第450話

雅之は低い声で訊いた。「あの人、見つかったのか?」

里香は首を横に振り、「ううん、執事が言ってたけど、今日はマスクをした使用人なんて雇ってないらしいの」と答えた。

誕生日パーティーのために急きょ大量のバイトを雇ったものの、厳しい要件があって、使用人がマスクなんかするはずがなかった。

雅之の表情はますます冷たくなり、スマホを取り出して電話をかけた。

「もしもし?ボス?」

聡のだらけた声が聞こえた。

「二宮家の旧館の監視カメラを確認してくれ」

雅之は時間帯を伝えると、聡の返事も待たずに電話を切った。

聡:「......」

今日が休みだって言ったのに、ほんと参るな......

里香は雅之を見つめて、「あの場所の監視カメラを調べられるの?」と訊いた。

雅之は淡々と、「少し待ってろ」と答えた。

里香は頷き、監視カメラの映像か、おばあさん自身が弁護してくれるのを頼るしかないと感じていた。

ただ、おばあさんはもう寝ているので、起こすわけにはいかない。

その時、部屋のドアがノックされた。

「雅之、里香、私よ」と由紀子の柔らかい声が聞こえた。

「どうぞ」

雅之が冷たく答えると、由紀子はドアを開けて、手に持った服を里香に差し出しながら言った。「これ、さっき届いたばかりで、一度も着てないから、よかったら試してみて」

里香はそれを受け取って、「ありがとう、由紀子さん」と礼を言った。

「気にしないで、欲しいものがあったら遠慮なく言ってね」と由紀子は微笑んだ。

里香は服を持ってウォークインクローゼットに入り、着替えを始めた。

由紀子が「ファスナーがちょっと特殊だから、手伝ってあげる」と言って、そのまま部屋に入ってきた。

雅之は冷淡にその様子を見ていたが、すぐに視線をスマホに戻した。

クローゼットの中で、里香は品のあるシンプルなワンピースに着替えた。膝が隠れる丈で、細い足首が際立つようなデザインだ。ウエストも絞られていて、彼女のスタイルが際立っていた。

ファスナーの位置は確かに少し変わっていて、由紀子が手を伸ばしてファスナーを上げてくれた。「本当に似合ってるわ」

里香は鏡の中の自分を見つめた。控えめな黄色のドレスが、彼女を瑞々しいデイジーのように引き立てていた。

由紀子はふとため息をつき、「あなたが二宮おばあさんを傷つけるわけないのはわかってる
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