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第451話

心の奥底から冷気が広がっていく。里香は必死に感情を抑え込んでいた。

由紀子がファスナーを整えながら、ふと訊いた。「里香、あの地下室を見た?」

里香は首を横に振り、「見てないよ。出てすぐこっちに来たから。おばあちゃんに何かあったら怖いから」と答えた。

由紀子は「見てないならよかった。あそこを見たら、びっくりしちゃうかもしれないから」と言って、クローゼットから出て行った。

その後、由紀子が寝室を出ると、里香が部屋を出る頃には、顔が少し青ざめていた。

雅之は里香の様子がいつもと違うことに気づき、近づいて彼女の手を握った。すると、その手は冷たくなっていた。

「どうしたの?」

里香は静かに彼の手を振りほどき、まぶたを落として言った。「まずおばあちゃんのことを解決して。誤解されたくないから」

雅之は軽く「うん」と答えたが、それでも彼女から感じる違和感と拒絶を察した。

以前はこんなことはなかったのに、今、一体どうしたんだ?

里香はそのまま外に向かって歩き出したが、雅之はすぐに彼女の腕をつかんで言った。「どこに行くつもり?」

里香は少し立ち止まり、「おばあちゃんを見に行きたい」と言った。

雅之は冷静に言った。「事がはっきりするまでは、行かせてもらえないだろう」

里香の足が一瞬止まったが、すぐにまた歩き出そうとしていた。

雅之は彼女の腕を再び掴み、低い声で問いかけた。「僕から逃げてるの?」

里香はもう誤魔化しきれず、神経を張り詰めて彼を見上げ、「啓のこと、あなたが手を下したの?」と尋ねた。

その瞬間、雅之はすぐに理解した。由紀子が里香に何か話したに違いない。でなければ、彼女が突然こんな質問をするはずがない。

雅之は表情を崩さず、冷静に言った。「里香、この件はもう終わったことだ」

「違うわ!」

里香は再び自分の腕を振りほどき、感情を抑えながら言った。「啓は、自分は冤罪だって言ってた。あんなこと、彼は持ち出して売るなんてしないって!」

深呼吸してから里香は続けた。「雅之、あなたには分からないかもしれないけど、私は啓にすごく世話になったの。たとえ山本おじさんが彼を見捨てたとしても、私は助けたい。もし本当に彼が冤罪で誰かにはめられているのなら......?」

雅之は彼女の激しい感情を見て、さらに暗い表情を見せた。「それで、どうやって調べるつもりだ?」
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