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第448話

里香は少し考え込んでから、ゆっくりと口を開いた。「ちゃんと調べてみるよ。もし本当にあなたが濡れ衣を着せられているなら、私が助けてあげるから」

啓はその場で崩れ落ち、泣き出した。「里香、本当にありがとう!」

でも、里香の心は複雑だった。

もし啓が、山本おじさんが金のために彼を見捨てたことを知ったら、どんな気持ちになるだろう?

同時に、里香の胸には冷たい疑念が湧いてきた。

もしこれが誰かの仕組んだ罠だとしたら、そいつの目的は一体何だろう?なぜ、わざわざ一介の運転手を狙う必要があったのか?

外に出ると、冷えた身体に少し暖かさが戻ってきたのを感じた。別荘の庭に目を向け、そのまままっすぐ進んだ。

まだ帰るわけにはいかない。雅之と会って、きちんと話をつけなきゃ。

庭は相変わらず騒がしく、人々が集まっていた。里香が突然姿を現すと、皆一瞬驚いたように固まり、次に驚きと軽蔑が入り混じった視線を彼女に向けた。

今の里香の姿はかなりみすぼらしい。ドレスは汚れ、髪も乱れていて、顔や腕には埃や泥がついている。まるで地面から這い出てきたみたいだった。

そんな里香を見て、召使いが青ざめ、前に出てきて止めようとした。「誰が出てきていいって言ったんです?早く中に戻って!」

里香はその召使いを押しのけて、はっきりと言い放った。「私は二宮家の三男の妻よ。なんで私が止められなきゃいけないの?」

召使いは驚いたように目を見開き、呆然と彼女を見つめたが、里香は気にもせずそのまま進んでいき、雅之の姿を見つけた。

「雅之、お前の嫁、どうしたんだ?難民みたいな格好して」と、隣に立っていた月宮が里香を見て嘲笑気味に言った。

その言葉に反応して、雅之もこちらに視線を向けてきた。

里香の様子を目にした瞬間、彼の表情が険しく曇り、彼女に向かって歩いてきた。

「どうしたんだ、一体?」

目の前の冷たく美しい雰囲気の男を見ながら、里香は怒りをぐっとこらえ、尋ねた。「啓のこと、ちゃんと調べたの?」

雅之の眉間にさらに深い皺が寄った。「あの件ならもう済んだだろ?忘れたのか?」

もちろん、忘れてなんかいない。当時、里香は雅之と賭けをして、もし自分が勝てば啓を解放してもらうと約束した。

でも、現実は里香に冷酷だった。山本おじさんはお金のために、息子を見捨てたんだ。

完全に自分の負けだ。

でも、
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