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第324話

里香は豚骨とトウモロコシ、それにいくつかの野菜を買って帰り、早速スープの仕込みを始めた。ソファに座ってスマホを取り出し、かおるにメッセージを送る。

里香:【家、売っちゃったから、しばらく泊めて】

かおる:【全然OK!しばらくどころか、ずっと住んでてもいいよ!】

里香:【いつ帰ってくるの?】

かおる:【こっちはもうちょっとかかりそう。桐島の景色がめっちゃ綺麗だから、帰ったらお土産持って帰るね】

里香:【楽しみにしてるよ。待ってるね】

かおるとのやり取りを終えたその瞬間、雅之から電話がかかってきた。冷めた声で「何?」と出ると、雅之は「いつ帰ってくるんだ?」と問いかける。

「帰るって、どこに?」

「碧浦の別荘だよ。僕、ずっとここに住んでるんだから」

「それが私に何の関係があるの?」

電話越しに雅之の息遣いが重くなるのがわかった。彼の苛立ちが伝わってくる。

「里香、僕たちまだ離婚してないんだぞ」

「はっ!」と冷笑し、里香は冷たく返す。「離婚してないからって、一緒に住まなきゃいけないなんて、どこの法律に書いてあるの?」

雅之:「......」

里香はさらに冷たく言い放つ。「用がないなら、もう電話してこないで」

電話を切ろうとしたが、ふと思いついて「離婚の話なら別だけどね」と一言加えた。

言い終わると、里香はスマホを横に置き、煮込んでいたスープの様子を見にキッチンへ向かった。

その一方、冷たい雰囲気が漂うオフィスでは、雅之が切れた電話を見つめ、顔を曇らせていた。里香の居場所は把握している。だが、無理に連れ戻せば、確実に反発される。下手をすれば、二人の関係はさらにこじれるだろう。いや、もう既に氷点下まで冷え切っているのだが。

ちょうどその時、桜井が部屋に入ってきた。「社長、夏実さんをお呼びしました」

雅之は冷たく命じる。「先に監禁しておけ」

桜井は「かしこまりました」と頷きながら、内心ではため息をついていた。昔なら、雅之がこんな冷酷な態度を取るとは想像できなかった。今回は夏実がやりすぎたに違いない。

夕方、里香は食べ物の詰まった食箱を手に病院へ向かう。彼女が病室に入った瞬間、その動きは雅之のスマホに通知されていた。

雅之は冷たく「病院へ行く」と言い、部下に指示を出した。

病室では、祐介がベッドに寄りかかり、里香が小さなテーブルを整え、
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