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第318話

お梅はこの光景を見て、顔色がさらに青くなった。「お月、やっぱり奥様の様子がおかしいよ。気絶してるみたい。どうしよう、旦那様に怒られちゃう......」

お月も不安げに、じっと手のひらを見つめていた。汗がにじんでいるのが分かった。彼女は軽く唾を飲み込み、「大丈夫よ。奥様が病気だって言わなかったのも、謝らなかったのも自業自得でしょ。旦那様が私たちを責めるわけないって。体調管理できなかった奥様の問題だから」と、少し強気に返した。

それでもお梅は、心配そうに眉を寄せた。「でも、やっぱり怖いよ......」

お月は彼女をじっと見つめて、「私が言った通りにしてれば、何も問題ないから」ときっぱり言い切った。

お梅は怯えたように肩をすくめたが、お月の強い言葉に押されて、しぶしぶ頷いた。「うん、わかった......そうする」

病院にて、医師が里香を診察し、点滴を始めた。彼女の体温はすでに40度を超えており、あと少しでも遅れていたら助からなかったかもしれない。

雅之は椅子に腰掛け、昏睡状態の里香を冷たい目で見つめていた。不快感とわずかな息苦しさが、胸の中で入り混じっている。

こんなに苦しんでたのに、なぜ何も言わなかったんだ?

時間が過ぎ、深夜になる頃、里香がようやく目を覚ました。彼女は咳き込みながら、反射的に手を動かそうとした。

「動くな!」

その手はすぐに押さえられた。

里香が顔を向けると、雅之がベッドのそばに座り、冷たい表情でこちらを見ていた。

里香は眉をひそめ、ついに雅之と目が合った。深呼吸し、慌てて言葉を発しようとした。「私......」

「病気になって絶食すれば、僕が過去のことを許すとでも思ったのか?」

雅之の冷たい声が彼女の言葉を遮った。その目は驚くほど冷たく、彼女を射抜くように見つめている。「どんなに自分を追い詰めても、お前を逃がすことはない。その考えは捨てろ」

里香の顔は青ざめ、目に涙をためながら、「あんたって......最低......」と呟いた。

その言葉は弱々しく、言い終わると同時に激しい咳が彼女を襲った。

雅之は、肺が張り裂けそうなくらい咳き込む彼女を見て、顔を曇らせ、すぐに医師を呼び診察を受けさせた。

里香はかろうじて彼に視線を送り、「......偽善者」と呟いた。

医師は診察後、感情を抑えたほうが回復には良いと忠告した。
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