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第309話

東雲はしばらく沈黙した後、「小松さんは倒れて、祐介さんに連れて行かれました」と言った。

雅之の声には冷たい怒気が漂っていた。「お前、それを黙って見ていただけ?」

東雲はしばし黙った後、ようやく答えた。「ご指示通り、小松さんの安全は守りました。でも、祐介さんは彼女に害を加えていません」

電話は一方的に切られた。

東雲:「......」

俺、言われた通りに動いたのに、何か間違えたか?

里香は、体が冷たくなったり熱くなったりしているのを感じていた。耳元で誰かが話しているような気がしたが、はっきりとは聞き取れなかった。

突然、口の中に何か苦いものが押し込まれ、反射的に吐き出してしまった。

「里香?」

その声が少し鮮明になり、どこか聞き覚えがあった。ぼんやりと目を開けると、目の前に祐介の端正な顔が浮かんでいた。

里香は少し驚いて、「祐介兄ちゃん、どうしてここに?」と尋ねた。

祐介は眉をひそめて言った。「お前、倒れてたんだ。今、熱があるんだから、薬を飲め。もう医者を呼んだから」

里香は乾いた唇を引きつらせて、「ありがとう」と言った。

祐介は「礼なんかいらない。で、どうしてあんな場所で倒れてたんだ?いつ帰ってきたんだよ?」と問いかけた。

里香は頭が割れるように痛く、薬を飲んで少し温かい水を口に含むと、少しだけ楽になった。

「祐介兄ちゃん、ここはどこ?」

里香は祐介の質問に答えなかった。

祐介の目が一瞬鋭く光り、「俺の家だ」と答えた。

里香は慌てて起き上がり、「行かなきゃ、ここにいちゃいけない」と言った。

雅之が東雲を自分に付けていた以上、どこにいるかは雅之に筒抜けだ。ここにいれば、祐介に迷惑をかけてしまう。

祐介は里香の肩を押さえ、「今は熱があるんだから、じっとしてろ。熱が下がったら、どこへでも行けばいい。俺は止めない」と落ち着いて言った。

里香は眉をひそめ、「祐介兄ちゃんに迷惑をかけたくないの......」と言った。

祐介は里香の額を指の関節で軽く叩き、悪戯っぽく笑った。「お前、俺のことを『兄ちゃん』って呼んでるんだろ?迷惑なんか気にするな。さあ、ちゃんと寝てろ。もうすぐ医者が来るから」

里香は頭がぼんやりしていたが、祐介に対して感謝の気持ちでいっぱいだった。「本当にありがとう」

祐介は「礼はいいからさ、治ったら飯でも作ってくれ
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