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第305話

夏実は目を伏せ、心の中の思いをひっそりと隠した。雅之がどうやって彼女と一緒にい続けるつもりなのか、しっかり見極めてやるつもりだった。

その頃、里香は別荘に戻ると、すぐにメイドが声をかけてきた。「奥様、台所からおばあさまのご指示で、坊ちゃまにスープをお持ちしました。奥様もお忘れなくお飲みくださいね」

「うん、ありがとう」里香は軽く頷き、「おばあちゃんはもうお休みですか?」と聞いた。

メイドは首を振って、「まだお休みになっていません」と答えた。

「そう、じゃあちょっとおばあちゃんの様子を見てくるわ」そう言って、里香はメイドと一緒に二宮おばあさんの部屋へ向かった。

おばあさんは花輪を作って遊んでいて、里香が入ってきたのを見て嬉しそうに、「里香ちゃん、一緒にいてくれるの?」と声を上げた。

「うん、おばあちゃん、今夜一緒に寝てもいい?」里香はおばあさんの向かいに座りながら優しく聞いた。

おばあさんは一瞬頷きかけたが、何かを思い出したように首を振って、「だめよ。あなたが私と寝たら、曾孫ができないじゃないか。雅之と一緒に寝なきゃ、あのバカ息子と」と言った。

里香は思わず口元を少し引きつらせた。見た目は子どもみたいなのに、頭の中は曾孫のことでいっぱいなんだ。

「遅い時間だから、早く雅之のところに戻って寝なさい」おばあさんは促すように言った。

「もう少し一緒に遊んでもいい?」里香は動かずに聞いた。

おばあさんは断ろうとしたが、里香はすかさず紐を取り出し、あやとりを提案した。「一緒にあやとりしましょう」

おばあさんはすぐにその話に乗り、「いいわ、いいわ」と何度も頷いた。

その頃、雅之の部屋では、メイドが「坊ちゃま、おばあさまのご指示で、スープを全部お飲みいただくまで見届けるようにとのことです」と告げた。

雅之はテーブルの上のスープを一瞥し、無造作に手に取って飲み干した。そして「里香は?」と聞いた。

「若奥様はおばあさまとご一緒です」メイドは答えた。

雅之は軽く頷き、空になった碗をメイドに渡した。メイドはそれを受け取って部屋を出ようとしたが、階段を下りたところで夏実と鉢合わせした。

「夏実さん、坊ちゃまがあなたに用があるそうです。どうぞ行ってみてください」メイドが近づいて声をかけた。

一瞬驚いた夏実。雅之が自分を?さっきまであんなに冷たかったのに、今度
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