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第3話

「奈々子、ケーキを切ってみないか?」

私が何か言おうとすると、悠真は話題を変えた。

半信半疑でケーキを真ん中から切ると、柔らかいケーキの中からルビーのブレスレットが現れた。それは、私の首にかかっているネックレスとぴったりお揃いだった。

悠真は眉を上げ、笑みを浮かべながら言った。「お前、このネックレスに合うブレスレットがないって言ってただろ?」

私は呆然と彼を見つめた。

8年前、私が事務室に引きずられて、クラスメイトにお金を盗んだと冤罪を着せられた時、悠真も同じような表情だった。

彼の目には、天が崩れても大したことはないようだ。

彼は私の代わりに教鞭を受け、私の代わりにお金を返し、最後に逆に笑顔で私を慰めてくれた。

たった一度の出会いなのに、彼は理由も聞かずに私を守ってくれた。

十七歳の少年は慌てて、制服で私の涙を拭き続け、「泣くなよ、僕は人が泣くのが一番見られないんだ」

私は目を閉じ、心の中でつぶやいた。

悠真、17歳の君のために、今の君をもう一度許してあげよう。

一週間後、私は再び悠真のオフィスを訪れ、会社設立3周年の記念式典について話し合おうとした。

すると、美穂子が私の前に立ちはだかった。

彼女は嘲るかのように笑みを浮かべ、その目には得意げな光が溢れていた。「鈴木さん、佐藤社長は会議中ですので、今はお相手できません。それにしても、先週のお誕生日はいかがでしたか?」

私はソファに座ってから、ゆっくりと彼女に答えた。

「渡辺さん、あなたは私の会社の社員です。普通なら私を佐藤夫人と呼ぶべきです。先週のことについては......あなた、こっちに来て」

美穂子は満面の軽蔑を浮かべながらも、素直に私のそばに来て、また挑発して言った。「なぜ先週佐藤社長が戻らなかったか知っていますか?だって、彼は私と一緒にいたんですよ―」

澄んだパチンという音が彼女の言葉を遮った。

彼女の言うことは一つも信じない。悠真がどんな人か、私よりよく知っている人はいない。

美穂子は顔を押さえ、驚愕の表情を浮かべた。「あなたこの女、私を殴るなんて!」

私はゆっくり立ち上がり、笑みを浮かべた。「殴っただけじゃないわよ。あなたを解雇することだってできる」

「私は佐藤社長の側近よ。どうやって私を解雇するつもり?」彼女の表情は恨みに満ちている。

「私にはこの会社の半分の株を持っているですもの」

言葉が終わると、悠真が出てきて、無表情に美穂子のそばに立っているが、何も聞かない。

美穂子はすぐに小さなバニーのような姿になり、顔を覆って、可哀想なふりをして、「私は大丈夫ですよ、佐藤社長。鈴木さんは頭にきているだけで、私を殴ったんです」

悠真は私に冷たく見つめて、警告した。「奈々子、会社はお前が感情的になる場所じゃない」

彼が美穂子を庇うだろうことは分かっていた。だけど、彼の冷ややかな目を見た瞬間、胸の奥が冷たくなった。

一体、私は何を期待していたんだろう?

「どうして私が手を出したのか、聞かないの?」私は彼を見つめながら尋ねた。

「理由が何であれ、手を出すべきじゃなかった」

「それで?」

「奈々子、謝れ」

私は視線をそらし、「悠真、今日ここに来たのは、記念式典の準備について話したかったの......」

彼は眉をひそめ、私の言葉を遮った。「その件はもう美穂子に任せた。奈々子、間違ったことをした人は謝るべきだ」

私は驚きに目を見開いた。

会社設立以来、周年記念の式典はずっと私と悠真の二人で企画してきた。それはまるで私たちの子供の誕生日を祝うような、大切なイベントだったから。

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