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第2話

だから私はいつも思っていた。悠真は、私に対して何かしらの感情を抱いているはずだと。

気づけば、時計の針は夜の7時を指していた。

入口には次々と人が出入りしているが、あの見慣れた姿はどこにも見当たらない。

私は待ち続けた。待ち続けて、ついに夜の10時半になった時、ようやくその日の最初の電話をかけた。

電話のコール音が1分以上鳴り続け、やがて馴染みのある女性の音声が流れた。「おかけになった電話番号はただ今、話し中です。しばらくしてからおかけ直しください......」

私は思わず心の中で考えた。何でそんなに忙しいの?

高橋社長と新しいプロジェクトの話をしているのか、それとも会社の問題を片付けているのか?もでもて美穂子と一緒にいる?

彼はいつも用事を抱えていて、その全てが私の優先順位よりも上にあるようだった。

どれだけの時間が経ったのか、私はそのまま眠りに落ちてしまった。

最初は少し寒かったが、眠っているうちに体は徐々に暖かくなっていった。

目を覚ますと、辺りは真っ暗で、ぼんやりとした火の光がちらついていた。

私は煙の強い匂いがじた。

「11時53分......まだ遅くはない」

悠真は煙を消し、その声には笑みが含まれていた。

続けて、彼が部屋の照明をつけ、白いシャツを着たその男は、私にかけたジャケットの襟をちょっと締め直してくれた。

私はぼんやりと彼を見上げながら問いかけた。「何かあって遅れたの?」

彼は少し止まり、短く答えた。「美穂子が退勤途中に当たり屋に遭った」

やっぱり。彼はもう言い訳さえ作るのが面倒だと思う。

私は感情が麻痺したように淡々と聞いた。「それで、あなたが彼女のために対応してきたのね?」

彼は軽く頷いた。「......ああ」

ずっと押し殺してきた不満が一気に溢れ出し、大粒の涙が頬を伝って落ちていった。

私は、8年間好きであり続けたその顔を見つめながら尋ねた。「じゃあ、私は?悠真、あなたにとって私は、そんなにどうでもいいの?」

珍しく彼は少し当惑し、彼は私の顔を両手で包み、流れ落ちる涙を次々とキスした。

でも最終的には、いくつの硬い言葉を搾り出しただけだった。「......泣くな、奈々子」

そう、彼はいつもこうだ。

彼は私を慰めるのが下手なのだ。

なぜなら、毎回喧嘩しても、私は黙って自分の気持ちを処理し、穏やかな一面を彼に見せてきたから。

彼は一度も私を慰める必要がなかったのだから。

悠真は小さなクマのケーキを私の前にそっと置き、バラの花束を手渡した。

彼は声を低くして言った。「お前の好きなクマと、バラだ」

でも私は、バラが好きじゃない。

悠真は、そんなことさえ覚えていない。

私はクマのケーキを切り分け、クリームでできたクマの頭を半分口に入れた。

......少し苦い。

まるで、悠真との関係そのものだ。歳月とともに、私たちの間の感情はますます苦くなっていった。

結婚したばかりの頃は、彼はこんな風ではなかった。たとえ愛していなくても、彼は私をとても大切にしてくれていた。

だが、重要なことが増えすぎた今、私はいつも後回しにされる。誰もが私よりも彼にとって大事な存在になっていた。

心が少し落ち着いた後、私は彼を真っ直ぐ見つめた。「悠真、あなたは美穂子と距離を保つべきだ。普通の上司は、社員がトラブルに巻き込まれても、そこまで対応しない」

彼は眉をひそめた。「彼女は3年間も俺についてきたんだ」

私は目を伏せ、小さな声で言った。「だったら、彼女の恋人に任せた方がいいんじゃない?」

「彼女には恋人がいない、奈々子。くだらないことを言うな」

私は深く息を吸い込んだ。「悠真、外での噂が聞こえないの?皆、美穂子があなたの本当の愛しい人だって言ってる。私が無理やりあなたを縛りつけたんだって」

少し間を置いて、私は続けて言った。「あなたは......いつか私があなたを離れることを恐れないの?」

彼はすぐに、自信たっぷりに答えた。「だが、お前は俺を離れられない」

悠真は知らないのだ。失望というものが、別れる勇気を生み出すことができるのだ。

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