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第27話

前世では明らかに冬城の一言で彼女を救えたのに、彼はそうしなかった。ただ傍観して冷ややかな目で見ていた。

思い至ると、真奈は自然に冬城が彼女の手の甲に置いた手を引っ込めた。

冬城は微かに眉をひそめた。

しかし、幸いにもこの行動は座っている人々には気づかれなかった。

家宴が終わった後、冬城は真奈と手をつないで瀬川家を出たが、外に出るとすぐに手を引っ込めた。

手のひらを見つめながら、冬城は突然、少し不安になった。

久々に真奈は口を開いた。「あなたはどうしてここに来たの?」

「なぜ一人で来ると辱しめを受けることがわかっているのに来たの?」

真奈は少し間を置いてから言った。「あなたに聞いたことがあるわ」

冬城は口を押し締め「今日はみなみの誕生日だ。やはり行かねばならないな」と言った。

「浅井みなみの誕生日?」真奈は驚いたように言った。「なら、どうしてまだここにいるの?」

冬城は、いつも他の人よりも、浅井みなみに会うことが重要だと感じる。

真奈の口調を聞いて、冬城は眉をひそめた。「瀬川家の家宴は冬城家と瀬川家の関係に関わるものだから、私は行くべきだろう」

「口ではなんとでも言えるのね」

真奈は小さな声で言った。

冬城は一時的に聞き取れなかった。「何だ?」

真奈は黙っていた。前世を覚えている。冬城もこの瀬川家の家宴であることを知っていたが、彼女について行かず、瀬川家の他の親戚や厄介な秦氏との対処を彼女一人に任せた。後で来ない理由すら面倒くさくて言わなかった。

「浅井みなみの誕生日はこんなに重要な日なのに、あなたは彼女と一緒に過ごさないのは適切ではないの?」

「お前が思っているほど俺は馬鹿じゃない」

浅井みなみに触れると、冬城の口調は少し柔らかくなった。「みなみは小さい頃から両親がいなくて、とても従順だ。瀬川家の宴会だと聞くと、俺に先に処理を任せるために電話をかけてきた。俺も彼女の終わった後、彼女と一緒に誕生日を過ごすと約束した」

話音が落ちた瞬間、冬城司は自分が言葉を間違えたことに気づいた。

真奈は鼻の先が酸っぱくなり、心の中で自嘲的に笑った。

浅井みなみは幼い頃から両親がいなかった、じゃあ彼女は?

冬城の目には、彼女と浅井みなみは全く違う存在だ。

「どうぞご自由に、私は家に帰ります」

真奈は車に乗る準備をして、振り返った。

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