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第9話

溪は間違っていなかった。監視カメラの映像に映っていた犯人、それは光雲だった。

彼女は溪のそばに潜り込み、彼の感情を利用して信頼を勝ち取って、それから有益な情報を手に入れ、頭に知らせていた。

死ぬ前、光雲は私に接触してきた。

ビデオ通話で、勝者のような態度を見せながら、溪と一緒に妊娠検診に行った写真を見せてきた。

彼女は言った。

「霧江、五年も彼のそばにいても、私には勝てなかったわね。溪は私の方を愛しているのよ!今回、負けたのはあんただよ!」

そう、私は完全に負けた。

だから、その代償を受け入れ、消えることを選んだ。

でも、本当に負けたのだろうか?

最初、誰も無害そうな光雲が犯罪組織と繋がっているとは信じなかった。

だが、溪が調査を進めるうち、彼女が国外での情報を辿り、その正体が暴かれた。

実際、光雲の「夫に捨てられた」という話はすべて嘘だった。

全ては溪の信頼を得るための作り話だった。

真実が明らかになると、同僚が重い口を開いた。

「隊長、逮捕しますか?」

溪は丸一日眠っておらず、オフィスの壁には容疑者の情報がびっしりと貼られていた。彼は眉間を揉み、答えた。

「派手に動けば、相手に勘づかれる可能性がある。指示通りに進めてくれ……」

数日後、光雲がいつものように溪の様子を尋ねてきた。

溪は二日間彼女の電話に出ず、忙しいと口実をつくった。

「死者についての手がかりが見つかったんだ。殺される前に絵を譲っていたらしい。それがメッセージだったのかもしれない。すでに部下を購入者の元に向かわせている」

光雲は聞いた瞬間、僅かに表情が固まった。

その一瞬を溪は見逃さなかった。

彼はハンドルを握る手が白くなるほど力を入れ、誰にも見られない角度で冷たい表情を浮かべた。

この時、溪はようやく自分のそばにいた者がどんな悪魔だったのかを知った。

家族を殺された悲しみは、溪にとって唯一の支えとなり、光雲は自分に迫る危機にまだ気づいていなかった。

翌日、溪は人員を配置し、美術展の会場に先回りした。

予想通り、敵はこの動きを察知していた。そして約束の時間になる前に、その絵を探し始めた。

今回、敵の人数は多かった。

慎重を期すため、まずは外部の者から片付け、頂上階へと進んだ。

ある者がアトリエの扉を開けた時、溪は長く待ち伏せていた。

そして
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