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第6話

光雲をなだめた後、溪はベランダに向かった。

彼の顔色は良くなく、重い心情を抱えてスマホを開いた。

彼は私のLINEを開き、半月前に私が「どこにいるの?」と送ったメッセージを見つめた。それからずっと連絡は途絶えたままだった。

彼はしばらく迷ったあと、スマホを閉じたり開いたりした。

最後はゆっくりと数文字を打ち込んだ。

「死んでないなら、戻って来い」

しかし私が返信しないことを見て、彼はそのメッセージを自分で取り消し、苛立たしそうにスマホをテーブルの上に投げた。

その瞬間、私は驚くことに気づいた。

溪が私を想っているような気がした。

なんだかぼんやりして、たぶん私の頭がどうかしているのだろうと思った。

溪が私を気にかけるはずがない。

私が消えてなくなることを願っているはずだ。そうしたら、彼は「初恋」の傍にいられる。

幸い、私が死んでからもう随分経った。

これからも彼らを邪魔することはないだろう。

それで良いのかもしれない。

溪がその場を去ろうとした時、隣の屋根から一匹の猫が飛び降りてきた。

それは、かつて私と溪が一緒に世話をしていた野良猫だった。

溪がその猫を見ると、彼の苛立った目にかすかに違った感情が浮かんだように見えた。

彼は顔をしかめながら、手慣れた様子で猫を抱き上げた。

「腹が減ったのか?」

「霧江がちゃんと餌をやってないのか?」

「これからは人を見る目を持つんだよ。あんな奴に頼る価値はないから」

彼は猫に向かって話していたが、まるで自分自身に言い聞かせているように聞こえた。

まるで私のことを考えないようにと、自分に言い聞かせた。

溪が猫をあやしていると、突然背後から誰かが現れた。

「何、この猫?かわいい!」

光雲がいつの間にか近づいてきて、溪の手から猫を奪おうとした。

しかし、溪の腕の中でおとなしくしていた猫が光雲を見た途端、毛を逆立てて爪を立てた。

光雲は驚いて叫び声を上げた。

「きゃあ!このクソ猫!」

猫は地面に叩きつけられ、苦しそうに鳴いた。

「何をしてるんだ!」

溪は感情を抑えきれずに光雲を押しのけ、猫を抱き上げた。

光雲はその怒鳴り声に驚き、顔に哀しげな表情を浮かべた。

彼女はその猫を指差しながら言った。

「その猫のために私に怒鳴るの?」

溪は頭を抱えてため息をつき、謝罪の言葉を
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