第1話

海面の捜索船の灯火が明滅し、救助員が着ている服の反射テープが波によって揺れ続けていた。

娘が行方不明になってから既に8時間が経ったが、岸辺に残されたのは一つの小さな靴だけ。

私は船がゆっくりと海岸に近づいてくるのを呆然と見つめていた。救助隊のメンバーが次々と私に慰めの言葉をかけてくれた。

暗闇に広がる大海を見ながら、私の星奈ちゃんは海底でどんなに怖がっているだろう。

魂を抜かれたボロボロの人形のように、私は無意識に一歩一歩海へと歩いていった。

素早い反応を見せた警察が私を引き止め、強引に家まで送り届けてくれた。

邸宅全体が明かりで照らされ、庭の花や木々もすべて飾り付けられていた。

裕美はピンク色のプリンセスドレスを身にまとい、水晶の王冠をかぶって、人々に囲まれて中央に立っている。

それに私の夫、吉田和也は、優しい表情で彼女の手を握りながらケーキを切っている。

「俺の裕美がまた一つ歳を重ねたことを祝おう。これからも毎年平穏でありますように」

なんて皮肉なんだろう。あなたの裕美はまた一つ歳を重ねたのに、私の娘はもう年を取るこができなくなった。

「お姉さんが帰ってきたんですね」目ざとい女が私に気づき、からかうような口調で言った。

裕美はケーキを一切れ切って、和也の腕に寄りかかり、笑顔で私を見つめた。

「元々はあなたたちの休暇を邪魔したくなかったんですけど、和也兄さんが私の誕生日会を聞いてどうしても来たいと言いますから」

「電話で星奈ちゃんの声も聞こえましたが、彼女はなぜあなたと一緒に帰ってこなかったんですか？」

星奈の名前を聞いて、私の心は刃で絞められる。和也が星奈を一人にしたことを知っているのに。

幼い娘を捨ててあなたと一緒にいるようそそのかすなんて、本当に冷酷非情な人だ。

私は半開きのドアを押し開けてリビングに入った。

泥で汚れた靴底が光り輝く大理石の床に目立つ汚れを残していた。

和也は不機嫌な顔で私を見つめた。「どうしてこんなに汚れている？服を着替えてからケーキを食べに来なさい」

私は冷笑した後、一言もせずに前に進み、力を込めてテーブルをひっくり返した。

この場にいたみんなは、油のしみやスープの汁でびしょびしょになり、非常にみっともない姿になった。

一瞬、悲鳴が上がり、お皿やコップがガラガラと音を立てて床に散らばった。

「今、誰が汚れていると言うんだ？」私は憎しみの含んだ目で、娘を殺した犯人を睨んだ。

裕美はすぐに両目を赤くし、不機嫌そうに地面にしゃがんで割れたケーキを拾い上げた。

「お姉さん、私何か悪いことをしましたか？」

「あなたが生きているだけで、私は不快になる」と私は一字一句で話した。

おそらく私の厳しい目つきに驚かれたかもしれない。

裕美は後ろに数歩よろめき、和也の腕の中に倒れ込み、涙を流しそうに私を見つめた。

和也は怒りに満ちた目で私を見つめた。「すぐに裕美に謝りなさい！そうでなければ、俺はお前を許さないぞ」

私は笑って言った。「あなたは何者？私はあなたの許しが欲しがっているに見える？」