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第36話

高藤商事で

西坂和夫が特別なルートを使って、伊吹嵐を社長のオフィスに連れて行った。

中には、首富の高藤誠が和服を着て寝ており、横には薬を擂る老人がいた。

「西坂さん、神医を連れてきてくれるって言ってたじゃないか。なんで若者が来たんだ」

高藤誠は、西坂和夫の後ろの伊吹嵐を見て、顔をしかめた。

「これは俺をからかってるのか?」

西坂和夫は笑いながら言った。

「高藤さん、お前は馬鹿にするなよ。この伊吹先生は、多くの権貴が彼に治療を頼もうとしてもチャンスがなかった存在だ」

この話を聞き、高藤誠とそばにいた老人は笑った。

西坂和夫の話を信じていないのは明らかだ。

「西坂さん、お前は無学で、騙されやすいんだよ」

高藤誠は伊吹嵐をじっと見た。

「他人を騙せても、我々商人を騙すことはできない。だますことに関しては、我々の方が一枚上手だ!」と言った。

医学界では、非常に経歴や年齢を重んじる。

伊吹嵐の年齢では、西洋医学ではせいぜい研修医で、中医学ではさらに低く、せいぜい見習いに過ぎない。

彼に病気を治療させるなんて、夢のまた夢だ。亀毛とかくの話だ。

伊吹嵐は冷ややかに「何を無駄話してるんだ。治したくなければなおさなくていい。治さないなら俺は帰る」と言った。

急いで慌てた西坂和夫は、「高藤さん、伊吹先生に無礼を働いたら、俺は手を返す」と言った。

高藤誠はしかたなく、「分かった、お前の顔を立てて、この子に見てもらうか」と言った。

伊吹嵐が近づき、脈を取ろうとしたその時、隣の老人がにわかに声を上げた。

「高藤社長、わしが差し出がましいようですが、あなたの病状はもう手遅れだ。しかし、わしの草薬療法で、せめてもう2、3年は生きられる」

「他の何とかいう雑多な医者に任せたら、腫瘍が悪化して、いつ死んでもおかしくない」

高藤誠は驚いて手を引っ込めた。

「小池先生は京都から来た漢方の専門家であり、彼の話に間違いはない。もういいよ。西坂君の好意は分かった。彼を帰らせてくれ」と言った。

「彼に20万円を渡して、手間賃としてやってくれ」

この話を聞いて、西坂和夫の顔色がすぐに沈んだ。

世間には、冥王閣下の医術を疑う者がいるとは。本当に釈迦に説法だ。

しかし、伊吹嵐は怒らずに冷静に小池卓を見つめた。

「何を見てるんだ?口が悪いとは思うが、全部本当のこと
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