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第4話

婚約式がとてもシンプルだった。

彼以外には、ごくわずかな友人と彼の妹しかこなかった。

彼の両親は海外旅行から戻ってきてくれなかった。

式中に、招いた観客たちは手を胸に抱え、私を審判するような眼差しで見ていた。

彼らの目には、私はただの泥棒猫に過ぎず、涼宮から奥さんの座を奪った人。

式が進んでいく。

私は目を見開いた。祐介が婚約指輪を取り出したが、私の指にはなかなかはめてくれなかった。

少し焦った。

私は彼に小声で促した。

「祐介さん」

彼は眉をひそめた。

ついに動き出した。

私はほっと一息ついた。

ちょうどその時に、悲しそうな女性の声が教会の入り口から聞こえてきた。

「祐介、彼女は誰?」

「私を置いて、他の誰かと結婚するつもりなの?」

その瞬間、祐介の顎のラインが引き締まったように見えた。

彼は結婚指輪を持っている手が震えている。

指輪はついに彼の指から滑り落ち、カランという音がして地面に転がり、音が綺麗に響いた。

私は彼と一緒に振り向いた。

彼女を見た。

祐介がずっと思っている涼宮桃子が帰ってきた。

彼女のアート写真は今でも祐介の寝室のベッドサイドに掛かってい流。

「桃子が、帰った?」

「これは夢?」

涼宮は私を見てから、彼を見つめた。

とても悲しい表情で、声のトーンも下げた。

「もし今日、この女と結婚したら、私は永遠にあなたと会わない」

そう言って、彼女の瞳に水の波紋が広がった。

「私が記憶喪失から回復し、そして帰ってくるまでにどれだけ苦労したか知ってるか?」

「私がいない間、あなたは私をこんなにふうに懐かしんでいたの?他の女と?」

祐介はためらうことなく私の手を振り払った。

彼女に向かって歩み寄った。

「祐介さん、今日は私たちの婚約式です」

「式が終わってから三人で話してダメですか?」

彼の体がちょっとだけ震えた。

彼は振り向かずに私に言った。

「横山、お前は知っているはずだ」

「お前はただの身代わり」

「金で弁償するから、今日の式はもう続けることができない」

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