共有

第8話

車はかなりのスピードで走っていて、窓の外の風景はただ一瞬で通り過ぎていく。

鈴川清は歯を強く噛みしめ、顎が緊張して強張っていた。

彼はあまりにも緊張していて、目は前方をじっと見つめている。

私は彼に、そんなに急がなくてもいい、急いでいないと言いたかった。

すると次の瞬間、まるで彼が私の心を読んだかのように、車のスピードが落ちた。

彼は微笑みながら言った。

「もうすぐ着くよ。安子、怖いか?」

彼の目には、私には理解できない感情が浮かんでいた。

私は首を振り、「怖くない」と答えた。

鈴川清は口元を少し緩め、安心したように言った。

「それでいい。安子、次の生では、もう自分をそんなに傷つけないでくれ」

私は一瞬戸惑い、無言で口を開いた。「わかった」と。

車は海辺に止まった。

だが、鈴川清はなかなか車を降りようとしなかった。

彼はハンドルを握りしめ、その手は震えていた。

車を降りたらそれが本当の別れになることを、私たちは二人とも分かっていた。

すると、私は彼の手の甲に自分の手を重ねた。彼には感じられないのはわかっていたが、それでもそうしたかった。

鈴川清は微笑みながら、「車を降りよう」と言った。

そして。彼は首にかけていたネックレスを外した。

それには小さなガラス瓶がかかっていて、その中には私の遺骨が入っていた。

私たちは一緒に浜辺を歩いた。

彼はポケットに手を突っ込み、口元にはずっと微笑を浮かべていた。

私は、身体の透明な部分がどんどん増えていくのを見ながら、岩のそばで立ち止まった。

彼は、「ここでいい?」と言った。

私はうなずいた。

「そうか、ここでいいんだな」と、彼は答えた。

鈴川清はガラス瓶を開け、わずかしかない遺骨を手に取り、勢いよくそれを海に向かって撒いた。

彼は大声で叫んだ。

「行け、安子!もう自由だ!」

そよ風が吹き、私の遺骨を海の深いところへと運んでいった。

私たちはお互いに微笑み合った。

ついに、私は、自由になった。

「鈴川!」

怒りの声が響いた。

柳時彦が目を赤くして、よろめきながら私の方へ走ってきた。

「鈴川、安子の遺骨を返してくれ!お願いだから、彼女を返してくれ!」

裁判所では、私は柳時彦をちらりと一度しか見ていなかった。

でも今、彼が近くにいることで、彼がどれほど憔悴している
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status