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社長、奥様が二兆円払うと言って離婚を要求しています!
社長、奥様が二兆円払うと言って離婚を要求しています!
著者: はるみ

第1話

小池比奈からメッセージを受け取ったとき、小池優奈は成瀬廉への結婚3周年記念のプレゼントを選んでいるところだった。

十数枚の親密写真に不意をつかれ、優奈は一瞬固まり、顔色が急に青ざめた。

どの写真にも成瀬廉と自分の双子の妹、小池比奈が映っていた!

二人が抱き合ったり、キスをしたり......唯一共通なのは、どの写真でも成瀬が比奈を見る目が愛に満ちていたのだ。

3年間静かに側に寄り添っていたのに、そんな目で自分を見つめたことは一度もなかった。

「見覚えある?」

優奈はズキズキするこめかみを揉みながら、写真に映っている場所はどこかで見たような感じを覚えた。しかし、思い出す前に、比奈から次のメッセージが届いた。

「お姉ちゃん、ここはあなたたち結婚時の新居なのよ。見てもわからないの?

ああ......忘れかけてたけど、結婚初夜以外、廉兄さんは二度とここに足を踏み入れさせなかったわね。どうしてか知ってる?

だって、この新居は廉兄さんが比奈のために用意してくれたんだもん。あなたたちが結婚したその日に、もしお祖母様が勝手なことをしなかったら、お姉ちゃんは一生ここに足を踏み入れることはなかったのよ!」

比奈の言葉一つ一つが優奈の心に深く突き刺さり、彼女は無意識に手が震え始めた。

携帯を強く握りしめ、ゆっくりと一行を打ち込んだ。

「比奈、これ以上写真を送らないで。あなたと廉さんはもう過去のことよ」

「あら、私たちは本当に縁が切れたと思ってるの?

私帰国してもう2ヶ月経つけど、この2ヶ月間、廉兄さんはずっと家に帰らなかったでしょ?

この間、毎日仕事が終わると、比奈に会いにここに来ていたのよ。比奈とエッチしてて、お姉ちゃんのことを何て言ったか知ってる?退屈すぎて、ダッチワイフと変わらないって言ったわ。

女としてこんなに失敗したなら、比奈だったらとっくに死んでしまうわ!

廉兄さんがまだ嫌いにならないうちに、自ら身を引いた方がいいわよ。そうしないと、最後に恥をかくのはお姉ちゃんよ!」

......

優奈は、自分がどうやって家に戻ったのか分からなかった。玄関から指紋ロックの音が聞こえた時、ようやく放心状態から戻った。

成瀬がドアを開けると、優奈が玄関の床に座っているのが目に入った。

彼は無意識に眉をひそめ、その目は不快感に満ちていた。

「ここで何してる?」

優奈は顔を上げて彼を見つめた。成瀬の端正な顔が目に入り、依然としてハンサムで、彼女の心を動かされた。

彼の目に少しでも愛を見つけようとしたが、そこには嫌気と不快しかなかった。

この3年間、ずっとその目で自分を見ていたのに、他の女にはあれほど優しく見つめるのを知って、心は切り裂かれたような痛みを覚えた。

優奈はゆっくりと立ち上がり、成瀬をまっすぐに見つめた。

「比奈が帰国したこと、どうして私に言わなかったんですか?」

成瀬は一瞬怪訝そうな顔になったが、その後は淡々とした口調で言った。「比奈ちゃんとは仲もよくないのに、わざわざ言う必要はないだろ」

優奈はうっすらと笑った。本当に必要がなかったのか、それとも比奈と浮気していることがバレたくなかったのか。

彼女は目を閉じ、一言一言ゆっくり言った。「成瀬さん、本当に私を妻だと思っているのなら、私たち夫婦の部屋で比奈とイチャイチャしないでしょう!」

成瀬の表情が変わって、「なぜ知ってる?」

「なぜ知ってるって? それは比奈に聞いた方がいいですよ! 愛人のくせに、よくもあんな写真を送って嫌がらせしてくるんですね!」

「優奈!」

成瀬の顔は怒りに満ちて、冷たい視線が矢のように彼女に突き刺さった。

彼の考えでは、比奈ちゃんは単純で、他人を傷つけるようなことはしないし、ましてや優奈を挑発するようなことはしない。

「比奈ちゃんとは君が言うほど汚い関係ではない。彼女はただ短期間泊まりに来ただけだし、君に写真を送るなんてこともありえない!」

優奈はその表情に刺され、目が一瞬真っ赤になった。「ただの泊まり?私をバカにしてるんですか?比奈が写真を送るはずがないって言ったのは、私が彼女を中傷しているって言うのですか?」

「他の人にはしないかもしれないけど、昔から比奈ちゃんのことが嫌いだし、同じようなことを以前にもやったんじゃない」

優奈は唇をすぼめ、突然自分が馬鹿馬鹿しく感じてきた。成瀬は何があったのかも聞かずに自然と比奈の味方になった。

比奈があえてその写真を堂々と送ったのも不思議ではない。

成瀬が自分の味方になってくれると予想していたのだろう。

優奈は疲れた様子で目を閉じ、淡々と言った。「何とでも言ってください。私が彼女を中傷したと思えばいいです」

成瀬の顔には怒りが一瞬浮かび、冷たく言い放った。「比奈ちゃんは何も悪くない。二度とそんなことを口にするな!」

比奈にはまだ何もしていないのに、もうこういう態度か。もし本当に比奈に何かしたら、成瀬は自分を許さないだろう。

優奈は自嘲気味に笑った。「成瀬さん、結婚して3年間、少しでも私のことを好きになったことはありますか?ほんの少しでも」

成瀬は冷たい目線で彼女を見つめ、「すでに結婚した以上、一生面倒を見てあげるよ」と言った。

答えないということは、つまり一度も好きになったことがないということね......

優奈は軽く笑い、涙を見られたくないと顔を背けて、「私たち離婚しましょう」と失望的に言った。

自分の愛がいずれ成瀬に伝わると信じて、3年間耐え続けてきたが、結局は自分を騙していただけだった。

今こそ、目を覚ますべき時なのだ。

成瀬は眉をひそめ、不機嫌な表情で言った。「優奈、わがままを言うな!」

自分の行動がただのわがままだとしか思われないことには予想しなかった。

優奈は手の甲で涙を拭き、真剣な表情で成瀬を見つめてこう言った。「わがままを言っているわけじゃありません。弁護士に離婚協議書を作成してもらいます。成瀬さんの財産は一銭も要りません!」

彼と結婚したときは何も持ってこなかった。離婚することになった今、財産目当てだと思われたくないのだ。

優奈が言い終わったと同時に、成瀬の顔色は一層険しくなり、全身から冷たいオーラがにじみ出た。

「優奈、俺は忙しいし、君と喧嘩する暇はない。今日の話は聞かなかったことにする。冷静になったらまた話そう!」

そう言って、成瀬は迷うことなくその場を去った。

成瀬は昔からこうで、喧嘩するたびに、優奈が屈するまで冷戦を続けていた。

別れを決意した優奈は、自分が以前どれほど卑屈だったかを痛感した。こんな自分に、成瀬が慰める気もないのね。

しかし、今後はその必要もないんだ。

翌朝早く、優奈は弁護士に離婚協議書を作成してもらった。

印刷している際、弁護士は我慢できずに彼女に忠告した。

「奥様、成瀬財団は現在何万億円の市場価値があります。社長と結婚して3年間、ずっと隠しながら辛抱してきたのですから、何億円要求しても、それは無理なことではありません」

「結構です。一刻も早く離婚したいだけなんです」と優奈は苦笑いをしながら言った。

それを見た弁護士も説得をやめ、離婚協議書を渡して立ち去った。

離婚協議書を最後のページに読み進めると、優奈は何のためらいもなくサインをし、指輪をはずして離婚協議書の上に置いた。それから立ち上がって2階に上がり、荷物を整理し始めた。

1時間もかからずに荷物の整理を終えた。持ち物は少なく、成瀬が買ってくれたものも受け取るつもりはないから、スーツケースひとつで十分だった。

3年間暮らした別荘を最後に振り返って、優奈の目には未練が少しも残ってなかった。自分に属さないものは、どんなに頑張っても手に入らないのだ。

この真実をわかるのに3年もかかった。

それでも遅くはない。

優奈が振り返って別荘の外に出ると、入り口には赤いランボルギーニが一台停まっていた。

彼女が出てきたのを見て、クラクションを鳴らした。

荷物を車に置いた後、優奈は助手席のドアを開けて乗った。

運転席には、色白でスタイルがいい女性が座っていた。

彼女は顔のほとんどを覆うような大きなサングラスをかけていて、顔全体がより繊細で小さく見えた。

優奈が座ると、高橋彩花は眉を上げて言った。「本当に決めたの?」

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