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第0044話

瑠璃の胸が締めつけられるような痛みに襲われた。

まるで無数の矢が彼女の心を貫くような、耐えがたい痛みだ。

あの夜を決して忘れることはできないだろう。無理やり引きずり出され、自分の子供を奪われた、あの夜を。

今でも、その子が男の子だったのか女の子だったのか、彼女には分からない。その子が自分に似ていたのか、隼人に似ていたのかさえも。

瑠璃は蛍のSNSを見ていた。そこには、彼女の裕福な生活が誇らしげに投稿されていた。高級車、名ブランドのバッグ、実の両親である複雑な背景を持つ人々、そして隼人との間に生まれた可愛い息子。

蛇のような悪女、蛍は今や全てを手に入れた。

一方、瑠璃は全てを失った。

なんて皮肉なんだろう。

何度も隼人に会いに行こうとしたが、その度に恐怖で立ち止まってしまった。

刑務所での地獄のような経験が、躊躇させたのだ。

しかし、自分の子供の行方を知りたいという一心で、瑠璃はついにその一歩を踏み出した。

かつて彼女が女主人だったあの屋敷の前に立った時、胸が締めつけられるような感情が押し寄せてきた。インターホンを押そうとした瞬間、蛍が家から出てきた。

彼女は華やかな服を身にまとい、余裕たっぷりに得意げな表情を浮かべていた。瑠璃を見つけると、一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに勝ち誇った笑みを浮かべた。

「誰かと思ったら、私の可愛い妹じゃないの。いつ出てきたの?更生できたのね」

彼女は高いヒールを履いて近づいてきた。虚偽に満ちた笑顔が、瑠璃には不快でたまらなかった。

「私の子供を返して」瑠璃は一言、静かにだが毅然として言い放った。

その言葉に、蛍の顔が一瞬硬直したが、すぐにその笑みをさらに強めた。

「あんたの子供?」

「そうよ!私の子供を返して!」

「死んだわよ」蛍は冷淡に言った。「隼人が言ってたの。あんたの子供は、私の流産した赤ちゃんの供養にするって」

瑠璃の視界が一瞬暗くなり、心臓が鋭利な刃で真っ二つに裂かれたかのような痛みが彼女を襲った。

蛍の服を掴み、感情の限界に達していた。

「嘘よ!絶対に生きてる!私の子供を返して!隼人に会わせて!彼に会わせて!」瑠璃は声を張り上げ、必死に訴えた。

「あんた頭がおかしくなったの?早く手を放して。さもないと、もっとひどい目に遭うわよ!」蛍は冷たく警告したが、瑠璃の目は怒りで赤くな
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