第2話

この世では、私がいなくても、伊藤拓真が一介の私生児からどうやって億万長者の道を歩めるのか、しっかり見てやろうと思った。

また、あの狂った伊藤拓野の手からどう逃れるのかも。

この世では、私の手で彼を地獄に送ってやる。前世の過ちを償うために。

各方面から契約を破棄され、伊藤拓真はどこからか注文を二件引っ張ってきて、会社をすぐに安定させた。

予想通りだ。

さもなければ、彼が二度生きた意味などない。ただの無能者ではないのだから。

私は一度やり直したことで、彼がもう私に関わろうとしないだろうと考えていたが、その図々しさを見くびっていた。

伊藤拓真が翔子の手を引いて私のオフィスに乗り込んできたとき、私は眉をひそめた。

「真紀、お前が最近、夏川監督の映画二本とバラエティ番組に投資したのは知っている。主役を翔子に変えてくれ」

彼の当然のような態度に、私は思わず笑ってしまった。

私は手にしていたペンを放り投げ、立ち上がりながら皮肉交じりに彼を見た。

「今、何て言った？」

伊藤拓真の眉間に一瞬、不機嫌そうな影がよぎったが、彼は言葉を繰り返した。

「お前が投資した映画の主役を翔子に......」

彼が気づかないうちに、私は机の上の鉢植えから土をつかみ取り、彼の髪を引っつかんで、その土を口に押し込んだ。

「うわっ！拓真！」翔子は驚愕の叫びを上げ、伊藤拓真の前に立ちはだかり、怒りに満ちた目で私を睨んだ。

「何をするんですか、相田さん！私が嫌いなのはわかっていますが、その怒りを拓真に向けるのはおかしいですよ！拓真は十分あなたに譲歩してきたでしょう？」

言いながら、彼女は涙目になり、何滴か涙をこぼした。それはまるで、私が彼女をいじめたかのような演技だった。

この手法はいつも有効だ。

案の定、壁に寄りかかりながら土を吐き出す伊藤拓真は、怒りに満ちた表情で私を睨んだ。その顔はいつになく険しかった。

「真紀！お前、いい加減にしろ！」

私は目を転がし、無邪気に肩をすくめた。

「何かに取り憑かれているかと思ってね。悪霊を払ってあげようとしただけさ。そんな馬鹿なことを言うなんて、そうに違いないだろ？」

「お前！」伊藤拓真は怒りでこめかみの血管を浮き立たせた。

オフィスの扉もカーテンも閉まっていなかったため、この騒ぎは社員たちの視線を引き、時折彼らがこちらを覗いているのが見えた。

私に何十年も支えられてきた伊藤拓真が、このような屈辱を受けたことは一度もなかった。私に面と向かって恥をかかされたこともない。彼はその場で顔を曇らせ、歯を食いしばって私に警告した。

「真紀、いくらお前がわがままなお嬢様だとしても、限度を考えろ！そうでなければ、俺たちの婚約は本当に終わりだぞ！」

私は皮肉な笑みを浮かべた。

彼はまだ、私が彼を救おうとしたあの真紀だと思っているのだ。

最初から彼は間違っていた。

私の使命は彼を救うことではない。

彼を殺すことだ。

前世では私が愚かだった。彼の哀れな姿を見て、救おうと思ってしまったのだ。

私は再び鉢植えの土を掴み、伊藤拓真の瞳孔が驚きで縮み、彼は翔子を引っ張って一歩後退し、警戒の目を私に向けた。

私は笑みを浮かべ、手の中の土を捨て、近づいて彼の顔を軽く叩いた。

「伊藤拓真、お前は日の目を見ない私生児だ。そんな奴が私と婚約する資格があると思っているのか？」

「覚えておけ、お前は永遠にゴミの中でしか生きられない私生児なんだよ」

そう言い放ち、私はドアを指差した。

「出て行け！」

伊藤拓真は冷たい目で私を睨み、歯を食いしばった。「よく考えろ、相田真紀！」

私はすぐに電話を取り出し、指示を下した。「警備員を呼んで、この二人を追い出して。次からは、会社の前に『犬とビッチの入場禁止』って書いておいて」

伊藤拓真と翔子は、ほとんど警備員に追い立てられるようにしてオフィスを出て行った。二人の顔は一層険しく、伊藤拓真は今までにないほど惨めな姿だった。