第4話

その後、私は彼の前で伊藤拓野という名前を一度も口にしなかった。

だが、伊藤拓野が彼の心の中の悪夢であることに変わりはなかった。

やがて、伊藤家の最初の製品が市場に投入されると、すぐに大きな問題が発生した。

買い手の半数以上が、次々と返品を要求したのだ。

さらには、多くの人が製品を品質検査機関に持ち込み、検査結果は伊藤拓真が言っていたこととはまったく異なることを証明した。

投資家たちもまた、伊藤家に対し、彼らの投資した金がどこに消えたのか説明を求めた。

伊藤家は外部からの批判と世間の非難に応じ、伊藤拓真を最速で切り捨てた。

伊藤拓真はどんなに弁明しても無駄だった。製品の予算管理ができなかったことは事実であり、投資家たちの資金を、彼が前世で悔いを残した恋愛に使ってしまったとは言えなかったのだ。

私が伊藤家に招かれたとき、目の前にはこの光景が広がっていた。

伊藤拓真が門の外に立ち、召使いが彼の荷物を全て外に投げ捨て、軽蔑の表情を浮かべていた。

「さっさと消えろ！社長がもうお前は伊藤家の人間じゃないって言ってたぞ」

そう言うと、召使いは力いっぱいにドアを閉めた。

伊藤拓真は拳を強く握り、陰鬱な表情でその場に立ち尽くしていた。

彼は背後からの足音を聞き、振り返って私を見たとき、一瞬の憤怒と恥辱が顔に浮かび、その目は冷たく輝いていた。

「相田真紀、俺がこんなふうになって満足か？」

私はほほ笑みながら答えた。「あなたが愚かだということが、私に何の関係があるの？それに、私生児ってのはこういう運命よ。あなたが何を偉そうに」

私は伊藤拓真の顔がますます青ざめていくのを見て、口を手で覆って笑った。

「こんなに落ちぶれて、翔子がまだあなたと一緒にいたいと思うかしら？」

伊藤拓真はすぐさま反論した。「翔子はお前みたいに目的を持って近づいた女とは違う！お前なんか、彼女の名前を口にする資格もない」

私は鼻で笑い、目をひとつ転じ、適当にうなずいた。「ああ、そうそう、あなたにぴったりね。あなただけがふさわしい」

召使いは私が来たのを見てすぐに迎え入れ、伊藤拓真の荷物を蹴飛ばしながら、嫌悪感をあらわにした。

「まだここにいるのか？さっさと出て行け！」

伊藤拓真の顔は恐ろしく陰鬱だった。

私は笑いながら彼のそばを通り過ぎ、耳元で静かにささやいた