共有

第13話

友達は俺の合図を受けて頷き、操作盤にUSBを差し込んだ。

その中には、俺が直規のために特別に用意した映像が入っていた。

突然流れ出した映像に、直規は不意を突かれた。

最初はぎこちなく笑っていたが、すぐに大慈善家の顔に切り替えた。

「さあ、まずはプロモーション映像をご覧ください」

そう言って、直規はスタッフに目で合図を送った。スタッフが数歩進んだその時、大画面から彼と太郎の声が流れ出した。

「高校生や大学生ほしい、分かるだろ?」

「適当な女をさらって誤魔化すなよ。俺がいなければ、お前たちの村なんてとっくに死刑判決を受けてるぞ!」

「はいはい、社長、ご安心ください。可愛い女子学生をもっと送りますよ!」

山太郎の卑屈な声が響き、先ほどまで笑っていた記者たちは一瞬で表情を変えた。

映像が流れ出すと同時に、直規の顔は青ざめ、急いで主機に向かって歩き出し、映像を止めようとした。

しかし、彼は汗だくになりながらも、映像は止まらなかった。

彼と太郎の会話が終わると、続いて俺が撮影した映像が流れ始めた。

そこでは、太郎たちが巧みに少女たちを利用し、わずか5分で1人の少女を誘拐する様子がはっきりと映し出されていた。

太郎の写真が出た瞬間、会場は騒然となった。

ネットで騒がれていた記者たちなら、きっと写真の中の人物を認識できるはずだ。

「これって、最近誘拐事件の犯人とされていた精神病の男じゃないか?なぜここにいるんだ?」

「まさか、山口直規と一味なのか?」

勘の良い記者たちはカメラを構え、ライブ配信をしながら議論を始めた。

直規はパソコンを止められないとわかると、大慌てでスクリーンのプラグを探し始めた。

友達はすぐにそれを察し、彼を引き止めた。

その時、友達が撮影した2人のツーショット写真が役に立った。

写真には、2人が精神病院を行き来し、救急車の中の少女を直規の別荘に連れて行く姿がはっきりと写っていた。

映像が終わると、直規は激怒して友達を押しのけ、大慌てでスクリーンのプラグを引き抜いた。

周囲の状況も忘れ、彼は地面に座り込んで息を切らしながら汗を拭いていた。

記者たちが一斉に質問を浴びせた時、直規は自分が何を経験したのか、ようやく気づいたのだった。
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status