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第35話

「3年前、伯父が交通事故で入院して、大金が必要だったの。私は大会を諦めて、お金持ちの家で介護の仕事をして稼ぐことにしたの」

紗希は平野兄さんに拓海と結婚したことを言いたくなかった。

直樹が提案した。

「来週は授賞式だね。紗希、パーティーで着る服を買いに行こう」

レッドカーペットを歩いたり、パーティーに参加した経験では、その場にいる誰よりも彼が豊富だった。

紗希は頷いた。

平野は心の中でため息をついた。この大会は小林家が主催しているため、彼は今のところ姿を現すことができず、妹の反感を買わないように身分を明かすのを避け、直樹に付き添ってもらうしかなかった。

しかし、翌日、直樹と平野は仕事で急用ができ、静香が彼女と一緒にショッピングモールに行くことになった。

ショッピングモールに着いた後。

紗希はここのブランドを見て、全て非常に高価な服だと気づき、静香の袖を引っ張った。

「静香姉さん、このモールのブランド、全部高すぎて手が出ないよ。別の場所に行きませんか?」

「紗希、心配しないで。私の友達がここで働いているから、割引で手頃な価格のイブニングドレスを選んでもらうわ。安心して、あなたは初めてパーティーに参加するんだから、きれいに着飾らなきゃ」

紗希は最初は行きたくなかったが、静香に引っ張られて入り、某一流ブランドのシャネルに向かった。

「紗希、本当にここに来たの。ここの服は数十万円、数百万円もするのよ。あなたの家柄だけで、ここの服が買えると思っているの?」

玲奈は美容を終えたばかりで、紗希がショッピングモールに入るのを見て、わざわざ後をつけてきた。

彼女はブランドのバッグを持って入ってきて、高慢な態度を取った。

義姉の静香は冷ややかに言った。「服1着くらい、買えないことなんてないわ」

静香は今日の出費を全く気にしていなかった。以前大京市にいた時も、ショッピングモールで値段を見たことはなく、欲しいものは何でも買っていた。

今日は特に妹のためにイブニングドレスを買いに来て、店にも前もって連絡してあった。そんな中、育ちの悪そうな女がどこからともなくやってきて、ドレス1着も買えないと沙希を嘲笑ったのだ。

紗希の前で控えめにしていなければ、6人の妹思いの男たちの性格からすれば、今日のショッピングモールを貸し切りにしていただろう。

玲奈は腹を抱えて
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