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第42話

詩織が近づいてきた。「拓海、何を見てるの?」

詩織は彼の視線を追って、紗希の後ろ姿を見つけ、途端に表情が曇った。

「まさか、紗希さんがそんなに腕があるとは思わなかったわ。決勝に進むのはそう簡単じゃないはずなのに。不思議に思ったけど、彼女の隣にいる男性を見てやっと理由が分かったわ」

拓海は視線を戻した。「どういう意味だ?」

「拓海、彼女の隣にいる男性は私の従兄の直樹で、大京市の最優主演男優なのよ。ここで彼を見るとは思わなかったし、まして紗希さんと一緒に来るとは思わなかったわ。彼はいつも控えめで、周りに女性がいたことなんてないのに」

詩織は意図的にそう言い、案の定、拓海の表情がさらに冷たくなるのを見た。

彼女は口を閉じ、紗希の方向を見上げ、目の奥に疑問の色が浮かんでいた。紗希はいつ直樹兄さんと知り合ったの?

三人の従兄弟と彼らの家族の関係は実際とても疎遠だった。小林家のいなくなった令嬢のせいだと聞いていた。それに、平野兄さんが彼女を孤児院から連れ戻って小林家のおばあさまを騙し、あの令嬢の身代わりをさせたせいで、三人の従兄弟とこちらは疎遠になったのだ。

彼女は三人の従兄弟と仲良くなりたかったが、三人は彼女を全く相手にしなかった。彼女が単なる身代わりだからだった。

詩織は目に一瞬憎しみの色が浮かんだ。紗希には何の資格があって直樹兄さんとあんなに親しくできるの?

詩織は隣の男性を見上げた。「拓海、今回審査員として来てくれるなんて、本当に驚いたわ。来てくれてありがとう」

「ああ」

拓海は短く答え、晩餐会の席の方へ向かった。

詩織は心の中の不満を飲み込み、携帯を取り出して責任者にメッセージを送った。「頼んだことはちゃんとやってくれた?」

「お嬢様、ご心配なく。間違いありません」

詩織はそれを見て口元に笑みを浮かべた。今日、拓海の前で紗希を見せしめにしてやる。

——

紗希は自分の席に座っていた。直樹は後ろの列にいた。選ばれた11人のデザイナー全員が2列目に座っていたからだった。

1列目には今回の特別ゲストと審査員が座っていた。

紗希は拓海が近づいてくるのを見た。彼は1列目の真ん中、ちょうど彼女の斜め前の方向に座った。

彼が座ると、長い脚をゆったりと伸ばし、全身から成熟した男性の魅力を放っていた。

すぐに、紗希の隣の女が話し始めた。「あの人す
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