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第43話

紗希はその言葉を聞いて、目を伏せ、本当の感情を隠した。

どうせ離婚協議書にはすでにサインしたのだ。拓海が誰と一緒にいようと、誰の応援に来ようと、もう彼女には関係ない。

その後、玲奈がどんな皮肉を言おうと、紗希は一切相手にしなかった。

しばらくすると、詩織が堂々とステージに上がり、今日の授賞式の開始を宣言した。

「皆様ご存知の通り、今年のコンテストルールは前回と比べて変更があり、10人だけが選ばれ、1人が落選することになります。公平を期すため、これからの採点では設計者の名前を隠し、授賞順序も少し変更があります。10位から順に発表していきます」

紗希は前の審査員席を見て、拓海もその中にいた。

明らかに今回、彼も審査員の一人だった。

彼女の心の中には実際、少し緊張があった。

ピンポーンと音が鳴り、直樹からLINEが届いた。「心配しないで。きっと大丈夫だから」

30分後、採点が終わった。

詩織はステージ上で発表した。「10位の選手は××さん、9位は...」

すぐに下位3つの順位の発表が終わった。

紗希は眉をひそめた。まだ4人残っている。

上位3名と、あと1人が落選者だ。

玲奈が顔を向けてきた。

「紗希、まさか上位3名に自分の名前があると期待してるんじゃないでしょうね。今回のコンテストは競争が激しくて、あの亜紗も参加してるのよ。あなたみたいな半人前で、期待しない方がいいわ」

紗希は表情を固くした。でも、あの天才の亜紗は彼女自身なのだ!

玲奈の褒め言葉に感謝すべきだろうか?

すぐに、詩織は3位、2位を発表したが、まだ彼女の名前はなかった。

紗希は斜め前の拓海に気づいたが、彼女が見た時には、男性はすでに視線を戻していた。

彼女は目を伏せ、最後の順位発表の瞬間を待った。

詩織はステージ上に立ち、拓海と紗希のやりとりを見て、目に暗い色が浮かんだ。そして笑顔で言った。

「一番の方の名前は、尾崎奈美さんです」

紗希は隣の隣に座っていた女の子が立ち上がり、興奮してステージに駆け上がって賞を受け取るのを見た。

彼女は一人で椅子に座り、両手をきつく握りしめ、この瞬間の恥ずかしさを隠そうとした。

たった今まで、一番は自分だと思っていたのだ!

でも他人の名前を聞いた後、まるで誰かに強く平手打ちされたような気分になり、呼吸さえも自分のものではないよう
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