共有

第214話

彼女は本当の小林家のお嬢様でなくとも、長年小林家で、あの気が狂ったようなおばあさんの機嫌を取ってきたことに対する労いはあるはずだ。

まさか小林家の3兄弟は、本当のお嬢様が戻ってくると思っているのか?

ハハ、夢を見るのはやめろ。

本当のお嬢様が帰ってくるなんてことは、不可能だ!

詩織は座って顔を覆い、最後に冷たい笑みを浮かべた。

今のところは一時的に同意するしかない。

まずは平野兄さんと静香姉さん、それに南兄さん、北兄さんに彼女の婚約式に来てもらおう。

結婚後の結納金については、彼女にはもちろん方法がある。

彼女が要求できなくても、あの気が狂ったようなおばあさんが自分から与えてくれるかもしれない。

そうすれば平野兄さんとの約束に違反することにはならない。

本当のお嬢様は一生戻ってこないのだから、彼女こそが正当な小林家のお嬢様なのだ!

――

紗希はオフィスの席に座って婚約式の会場をデザインした。

ロマンチックで美しいデザイン図を見て、彼女はすぐに羨ましそうな表情を浮かべた。

実は彼女も、自分の結婚式がどんな感じになるか想像したことがあった。

でも残念ながら、拓海と結婚した時はとても、結婚式どころか、正しい手続きさえも踏んでいない。

拓海はその時意識不明の状態で、命の危険がいつあるかわからなかった。

彼女はその時拓海に密かに恋をしていたので、彼と結婚したことを後悔しなかった。

でも誰が今のような結末を想像できただろうか!

やはり人を好きになるなら、距離を保つのが一番だ。

もし時間を巻き戻せるなら、きっとあの時親切な自分に平手打ちをくれてやりたい!

拓海の生死が彼女に何の関係があるのか?

男性に同情することは不幸の始まりだ!

今の彼女がまさに、その生きた例だ!

紗希は拓海を心の中で何度か呪った後、やっと気が晴れた。

彼女は自分の腹部を撫でた。

「赤ちゃん、ママはあなたを嫌っているわけじゃないのよ。私は拓海が嫌いだけど、子供は好きなの」

このとき、彼女は伯母から電話を受けた。

「紗希、私は午後に立ち退き事務所の責任者に会いに行ったの。相手は、明日みんなと一緒に契約すると言ったわ。それと、私たちの部屋はすでに誰かが署名しに来たと言った」

「そんなはずないわ。平野兄さんがちゃんと手配したはずよ。誰が署名したの?」

「近所
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status