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晴れていく心-08

Penulis: あさの紅茶
last update Terakhir Diperbarui: 2024-12-26 11:20:26

「――まあ、ご親切にチケットをいただいて、車まで出してもらったの? まあ~」

「とても楽しかったですよ。海斗くんは水が大好きで紗良さんに泳ぎを教えていました」

「そうなのよー、この子ったら海ちゃんと違って昔から水が苦手でね。二十五年生きてきて学校以外のプールなんて初めて行ったんじゃないかしら? 水着だって持ってないから慌てて買いに行って――」

「お母さん! もう、恥ずかしいからやめて!」

「だからあんなに必死に浮き輪を持っていたんだね?」

「きょ、杏介さんまでからかわないでください!」

紗良は頬を染めながらぷんすか怒るが、そんな姿が杏介には大変いじらしく映り思わず目を細める。

わいわいと騒ぎすぎたからだろうか、ふいにむくりと起き上がった海斗は目をこすりながら「あれー? せんせー? なんでいるの?」と呟く。

時計を見れば思ったよりも長く石原家に滞在していた。

「おはよう、海斗。じゃあ僕はそろそろおいとましようかな」

「やだ! まだあそぶ!」

「こら、海斗わがまま言わないの。先生だって忙しいのよ」

「やだやだー」

海斗は杏介の膝の上に座り、頑として動かなくなった。

「海斗!」

「あらあら、よっぽど楽しかったのねぇ」

「海斗、今度はどこ行きたい? また先生が連れてってあげるよ」

「ほんと?」

「ああ本当。約束だ」

杏介は小指を差し出す。

海斗は小さな指を杏介の指に絡めてブンブンと勢いよく振った。

「ゆーびきりえんまんーうーそついたーらはりせんぼんーとーますー」

真剣な顔で言い間違えながら歌う海斗にほっこりと癒やされながら、大人たちは顔を見合わせてふふっと微笑んだ。
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  • 泡沫の恋は儚く揺れる〜愛した君がすべてだから〜   番外編③ シアワセノカタチ-04

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  • 泡沫の恋は儚く揺れる〜愛した君がすべてだから〜   番外編③ シアワセノカタチ-03

    「どうしたの、海斗」「これを見て!」海斗はおもむろにランドセルを背負う。 まだまだピカピカのランドセルを、紗良に見せつけるように体を捻った。「ランドセル?」「そう! ランドセル! 写真撮りたい。リクもさなちゃんも写真撮りにいったんだって」「写真? 写真なら撮ってあげるよ」紗良は自分のスマホのカメラを海斗に向ける。「ちがーう。そうじゃなくてぇ」ジタバタする海斗に紗良は首を傾げる。 咄嗟に杏介が「あれだろ?」と口を挟む。「入学記念に家族の記念写真を撮ったってことだよな?」「そう、それ! 先生わかってるぅー」「ああ~、そういうこと。確かに良いかもね。お風呂で何か盛り上がってるなぁって思ってたけど、そのことだったのね」「そうそう、そうなんだよ。でさ、会社が提携しているフォトスタジオがあるから、予約してみるよ」「うん、ありがとう杏介さん」ニッコリと笑う紗良の頭を、杏介はよしよしと撫でる。 海斗に関することなら反対しないだろうと踏んでいたが、やはりあっさりと了承されて思わず笑みがこぼれた。「?」撫でられて嬉しそうな顔をしながらも、「どうしたの?」と控えめに上目遣いで杏介を見る紗良に、愛おしさが増す。「紗良は今日も可愛い」「き、杏介さんったら」一瞬で頬をピンクに染める紗良。 そんなところもまた可愛くて仕方がない。夫婦がイチャイチャしている横で、海斗はランドセルを背負ったまま「写真! 写真!」と一人でテンション高く踊っていた。

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