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第6話

坂本那月はとても冷静だった。

「まず、これは上川亜衣子さんがネットに投稿したとされる手稿のコピーです」

さらに、別のファイルを取り出し、「ここには佐藤千世さんが過去に参加したコンペで残した手書きの作品集が含まれています。関係機関の鑑定によって、字跡が同一人物のものであると確認されました」

その鋭い視線が上川亜衣子を貫き、彼女は青ざめて目を逸らした。

「したがって、佐藤千世は盗作していませんでした。それなら、上川亜衣子が嘘をついたということですか?」と誰かが疑問を投げかけると、

「はい!そうです!」坂本那月は大声で宣言した。

「佐藤千世さんは盗作していなくて、彼女の作品はすべてオリジナルです!」

この詐欺の真相が一つずつ明らかになり始めた。

実際、上川亜衣子の手口は稚拙だったが、これまで誰も深く追求することはなかった。

問題の根本には、久我東弥の証言があった。

私の「愛する」夫が、私の盗作を認めてしまったのだ。

他の人々は真実など気にせず、自分たちの認識する真実に従って、悪者としてラベルを貼り付けてしまう。

「亜衣子が一時的に誤解して佐藤千世の手稿を取ったとしても、それはせいぜい道徳的な問題だ。もし佐藤千世が生きていれば、俺の顔を立てるため、きっと亜衣子を許すはずだ!」

「佐藤千世の死と亜衣子を結びつけるのはおかしい!」と怒鳴る久我東弥を見つめ、私は驚愕した。

彼が上川亜衣子に対して、ここまで愛情を注いでいるとは思わなかった。

感慨にふける私を尻目に、坂本那月が言葉を続けた。

「ああ、そういえば、君のことを忘れていた」

私は混乱した。

私の死が久我東弥に関係しているのか?

そんなことはあり得ない。

火は上川亜衣子が私の目の前で起こしたもので、私も彼女に襲われたのだ。

久我東弥は私が死んだことすら知らなかったのだから、どうして彼に関係があるのだろう。

「佐藤千世は君より賢い、承知しているだろう」坂本那月は冷静に続けた。

「佐藤千世は君より才能がある、君も承知しているだろう」

彼は久我東弥を見つめ、その反論を待った。

「俺と佐藤千世は志向も専門も違う、比較する必要はない!」

「佐藤千世は君より賢く、君より才能があるからこそ、君は彼女を専門を変えさせた。彼女は元々、演奏界で優れた才能を持っていた!」と坂本那月は再度強調した
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