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第8話

彼は振り返り、私に微笑んだ。

外の風が薄いカーテンを揺らし、日差しがちょうど私の身体を通り抜けて彼に降り注ぐ。

「ありがとう」

彼は首を振った。

「故郷に君の碑を立てたんだ。見に行く?」

私はすぐに答えた。「いいね!」

普通の人が自分の墓碑を見る機会なんてないのだから。

しかし、ふと思った。

「どうして故郷に?」彼は言った。「君が向日葵を好きだって言ってたから」

そうだった、私は自分が言ったことをすっかり忘れていた。

私は尋ねた。「どうして私が見えるの?」

坂本那月は壊れた玉のペンダントを取り出し、「これが壊れた時、君に何かがあったと思った。遺体を見た時は、刀を持つ手が震えた」

この玉のペンダントのおかげで私が見えていたのか。

もう悩むのをやめた。

私の身体は制御できずに浮かんでいった。

さようならも言えないまま、消えていった。

久我東弥は逮捕されたが、上川亜衣子は理由もわからず彼を弁護し、すべての責任を自分に押し付けた。

幸いにも、法律は公平だった。

証拠に基づき、上川亜衣子は精神的に完全に久我東弥に支配されていたことが確認された。

彼女は精神病院に送られ、久我東弥は殺人罪で死刑判決を受けた。

彼の両親は失望し、法廷にも出席せず、最後まで会いに行かなかったらしい。

これらのことは、全て坂本那月が私の墓前で話してくれた。

私はぼんやりと故郷に辿り着き、坂本那月が私のために立てた墓碑の前に立った。

目の前には、果てしない向日葵が広がっていた。風が吹き、金色の波が揺れる。

「林先生、ゆっくりしてください」

坂本那月は林先生を支えながらやって来た。

彼は先生を助け、私にはっきり見えない花を抱えていた。

その花を私の墓の前に置くと、先生は何も言わず、ただ涙を流した。

涙は静かに流れていた。

先生はきっと散々怒っている。そんな不器用の私に。

あの時、私が専攻を変えたいと言った時に、先生がどれほど心配していたか思い出した。

普段は優しい坂本那月が、何も言わずに先生を見守っている。

先生の体がよくないことを知ってるはずなのに、ちょっと先生を止めてくれよ。

私は近づいて、彼を叱ってやろうとした。

しかし、彼も涙を流していた。

その熱い涙が私の手のひらを通り抜け、まるで生きているかのような感覚が広がった。

これは
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