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第37話

 雅彦は元々上の空で清墨と話していたが、清墨の話を聞いて、彼は表情が一変した。

 その腕時計は父親がオークションで買ってきて、彼にプレゼントしたものだった。だから、その腕時計に関しては、雅彦はあまり知らなかった。もし中に本当に追跡システムが入っていたら、その女性の行方を追うことができるのではないかと彼は思った。

 ここまで考えると、雅彦はここで時間を無駄にしたくなくなり、立ち上がって「まだ用がある。ここでゆっくりしていてくれ」と清墨に言った。

 言い終わると、彼はすぐに立ち去った。驚きで目を見張る清墨一人を個室に残してしまった。

 一体何なのだろう?さらに清墨を困惑させたのは、雅彦が去った直後にバーのスタッフが勘定を持ってきたことだった。

 勘定を見て、彼は歯を食いしばった。このくそ雅彦、自分が気分が悪いから、私に悪ふざけをするのか?と清墨は思った。

 バーから出た雅彦は清墨がまだバーに残ったことを忘れて、すぐに伊川に電話をかけた。腕時計の追跡システムがまだ使えるかどうか確認するように指示した。

 命令を受けた伊川はすぐに海外と連絡を取った。しばらくして「雅彦様、腕時計には確かに追跡システムがあります。それをアクティブにすれば、すぐ使えるようになります」との返事がきた。

 「じゃあ、頼む。できるだけ早くあの夜の女性を見つけ出してくれ」と雅彦は言った。

 電話を切った後、雅彦はスマホをいじりながら、冷たい眼差しを浮かべた。

 追跡システムがあれば、あの夜の女性を見つけ出すのは難しくないのだ。その時が桃にさようならと言うべき時だと彼は確信した。

 …

 翌朝

 桃は早起きしていた。昨夜はあまりよく眠れなかった。朝起きて雅彦が帰ってこなかったのを見て、彼女は唇に苦い微笑みを浮かべた。

 たぶん昨夜の出来事で雅彦が怒ったため、一晩中帰ってこなかったと桃は思った。

 しかし、彼が不在ならば、この時間帯を利用して荷物を整理しなければならないと思って、桃はすぐに動き始めた。

 昨夜、彼女は必要な情報をすべて調べたので、今日荷物をまとめてからすぐに出発できるのだ。

 菊池家に持ってきた荷物が少ないため、桃は手っ取り早く全部のものをリュックに詰め込んだ。

 出発前に、彼女は部屋を一度見渡し、おそらくこれが永遠の別れだろうと思った。

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