とわこは車を家の前に停めた。 宅配員は庭の門の前で彼女を待っていた。 彼女は車から降りて、郵便物を受け取り、サインをしたところで、バッグの中の携帯が鳴った。 一方で郵便物を持ちながら、もう一方の手で携帯を取り出した。 庭の門を開けて、彼女は電話に出た。 「今、どこにいる?」電話の向こうから、奏の低く落ち着いた声が聞こえてきた。 「家にいるわ」とわこが答えた。「体調は大丈夫か?」彼の声には、かすかな心配が滲んでいた。「大丈夫よ、荷物を受け取りに戻ってきただけ」彼女は前庭を通り、家のドアを開けた。家に入ると、郵便物を靴箱の上に置いた。「何かあったの?」 彼女はスリッパに履き替え、携帯を手にソファに向かった。 「はるかとは本当に弥と一緒になったようだ」ついさっき、奏のボディーガードが弥を連れて来たところ、弥はすべてを白状したので、奏はとわこにこの電話をかけた。「君はどうしてそれを先に知っていたんだ?」「じゃあ、あなたはどうして確信したの?」彼女は携帯を握る手に少し力が入った。 「弥が話したんだ。彼曰く、俺がはるかと別れた後、彼とはるかが付き合い始めたそうだ。数日前に関係を確定させたらしい」奏の声は穏やかだった。「俺ははるかと彼が一緒にいることを気にしていない」 とわこは彼の言葉を聞き、軽く相槌を打った。 もし弥が彼に、「叔父さん、俺はただ君を裏切っただけじゃなく、君をパパにしてしまったよ」と言ったなら、彼はこんなに落ち着かなかっただろうか。 「もう過去のことよ」とわこはこの話をここで終わらせたかった。 奏ははるかを愛していなかったし、はるかとも何もなかった。それだけで十分だった。 彼女は奏がこの件で噂話の的になるのを避けたかった。 彼がはるかに裏切られたことを気にしていなくても、他の人々はきっとこのことをネタに彼を笑うだろう。 電話の向こうで、奏は数秒間沈黙した後、かすれた声で言った。「君が怒っているのは分かっている......」 「怒ってないわ!気にしてないし、もう怒りもないわ。過去のことは過去にしてしまいましょう」とわこの声は軽やかだった。 彼女の声は、本当に何事もなかったかのように穏やかに聞こえたが、彼はそんなに簡単ではないと感じていた。
常盤グループ。 裕之は一郎のオフィスでお茶を飲んでいた。「最近、社長があんなに嬉しそうにしているのを見たことがないよ!」裕之は笑いながら感嘆した。「彼が多くのフルーツとお菓子を買ってきたのを見たんだ。とわこがあんなに食べられるのか?ハハハ!」一郎は眉をひそめた。「とわこはどうして突然気持ちを切り替えたんだ?本当に女心は海の底だな!」「もしかしてはるかが弥と一緒になったからじゃないか?」裕之は推測した。「それ以外に考えられる理由がないしな」 「そうだといいが」一郎は茶杯を持ち上げ、裕之と軽く乾杯した。 30分後。 とわこは車で常盤グループに到着した。 裕之は一郎とお茶を飲んだ後、会社の入口で彼女を待っていた。 とわこのランドローバーが見えると、裕之はすぐに彼女の方へ大股で歩いていった。 とわこは裕之を見ると、すぐに窓を下げた。「裕之さん、駐車スペースがないみたいだから、外に止めてくるわ」裕之は笑って言った。「ここは広々とした駐車スペースがあるから、好きなところに停めていいよ!会社の玄関前でも問題ないさ」 とわこは「???」と困惑した表情を見せた。裕之は大きな手を振りながら、彼女に方向を指示した。「あそこに停めていいよ!」 「そこには駐車スペースがないけど?」 「大丈夫さ!ここ全部が常盤社長の土地だから、どこに停めても構わないよ」裕之は愛想笑いを浮かべ、「それとも、私が停めようか?」 とわこは恥ずかしそうに首を振った。「いえ、自分で停めます」 彼女は車を停め、ドアを開けて車から降りた。 「とわこさん、今日はとても綺麗ですね!」裕之は心から褒めた。 彼女の上は小さな花柄のチューブトップ、下は同系色のタイトなロングスカート。 彼女の肌は白く、スタイルも細身で、この服は彼女の曲線を完全に引き立てていた。 セクシーでありながらも魅惑的だった。 裕之は社長がこれを見たら、きっと抑えきれないだろうと感じた。 とわこは少し後悔した。 ただ、奏に会いに来ただけなのに、どうしてわざわざ着替えたのだろう? 彼とは昨日会ったばかりだし、毎日でも会えるのに。 彼がまだ仕事中なのに、こんな格好で会いに来たら、他の人にどう思われるだろうか? 「私..
今日は東京の名門、三千院家令嬢、三千院とわこの結婚式だ。彼女の結婚式には新郎がいなかった。新郎の常盤奏は半年前の交通事故で植物状態となり、医者から年内の余命を宣告されていた。失意のどん底に落ちた常盤家の大奥さまは、息子が亡くなる前に、結婚させようと決めた。常盤家が、東京での指折りの一流名門だが、余命わずかの人間に喜んで嫁ぐ令嬢は一人もいなかった。…鏡台の前で、とわこは既に支度の整えた。白いウェディングドレスが彼女のしなやかな体を包み、雪のように白い肌が際立っている。精妙な化粧が彼女の美しさをさらに引き立て、まるで咲きかけた赤いバラのようだった。その大きくてつぶらな瞳には、不安の色が浮かんでいた。式開始まで、あと二十分、彼女は焦りながらスマホのスクリーンを何度もスライドして、返事を待っていた。無理矢理常盤奏との結婚を強いられる前、とわこには彼氏はいた。奇遇にも、その彼氏というのは、常盤奏の甥っ子で、名は弥だ。ただ、二人の関係はずっと伏せていた。昨晩、彼女は弥にメッセージを送り、東京から逃げ出して、一緒に駆け落ちしようと頼んだが、一晩中待っていても返事は来なかった。とわこはもう、待っていられなかった。椅子から立ち上がった彼女は、スマホを握りしめて、適当な口実を作って部屋を抜けた。回廊を抜けて、とある休憩室の前を通ろうとしていたところ、彼女は驀然と足を止まってしまった。閉じたはずの休憩室のドアの向こうから、妹のはるかのかわいこぶった笑声が聞こえてきた。「きっとまだ弥くんが来るのを待っているのよ、うちのバカ姉は!ねぇ、後で会ってあげなよ。もし後悔でもして、結婚してくれなかったら、どうするの?」弥ははるかを抱きしめながら、彼女の首に自分の薄い唇を走らせながら言った。「今更、あいつが嫁入りしたくないってわがままを言っても効かないんだろう?後悔したとしても、俺ん家の用心棒どもが多少強引な手を使って、結婚させてやる!」聞こえてくるはるかの笑声は先よりも耳障りだった。「弥くんが毎晩あたしといるの、とわこに知られたら、きっと発狂するわよ。あははは!」頭の中で轟音が鳴り響くのをとわこは感じた。彼女は気が抜けたように後退し、転びそうだった。両手でしっかりとウェディングドレスの裾を握りしめていた彼女は、ま
シャンデリアの下にいる奏の目は黒曜石のように深く、内に秘めた何かが垣間見えるかのようで、悩ましいと同時に危険なオーラを放していた。彼の視線はいつもと同様、身の毛がよだつほどの冷徹さを帯び、相手の心を脅かしていた。驚きで顔が真っ青になった弥は、がばっと数歩後退した。「とわちゃん…じゃなくて叔母さま、もうだいぶ遅くなりましたので、私はこれで失礼いたします」冷や汗が止まらない弥は、足元がおぼつかないまま主寝室から逃げ出した。弥が逃げ出す姿を見届けたとわこも、口から心臓が飛び出しそうになり、全身が小刻みに震えて止まらなかった。常盤奏が起きたの?!もう余命は長くないはずなのに!とわこは奏に話かけようとしたが、口から言葉が出られなかった。もっと近寄って彼の様子を見ようともしたのに、足がまるで床に縫い付けられたかのように、一歩も動けなかった。未知への恐怖に包まれた彼女は思わず尻込みをし…下の階へと走り出した。「三浦さん、奏さんが目を覚ました!目開いてくれたわ!」とわこのを声を聞いて、三浦は急いで上の階に上がってきた。「若奥さま、若旦那さまは毎日目を開けますが、これは意識が回復したわけではございません。今こうしてお話をしていても、何の反応もくれませんでしたよ」ため息まじりに三浦は「植物状態から回復する確率は極めて低いとお医者さまが」といった。「夜、明かりをつけたまま寝てもよろしいですか?何となく不安で」とわこの胸はまだどきどきしていた。「もちろんです。明日の朝はお家元の本邸へ行く予定ですので、若奥さまは早めにお休みください。では、明朝お迎えに参ります」「はい」三浦を見送ったとわこはパジャマに着替え、ベッドに上がった。彼女は男のそばで窮屈に座り込んだ。奏のきれいな顔を見つめながら、彼女は手を差し出して、彼の目の前で振った。「常盤奏、あなたは今何を考えているの?」しかし、男は何の反応もしてくれなかった。彼女の心境は突然悲しみに変わり。彼の境遇を思えば、自分の苦しみなど些細なものだと感じた。「常盤奏、目を覚ましてほしい。あんな大金が弥のクズの手に入れたら、あなただって死んでも死にきれないでしょう」彼女がそう呟いた瞬間、男はゆっくりと目を閉じた。彼をじっくりと見ているとわこはぼんやりとしながらも緊張
今のとわこはまるで背中に棘が刺さられいてるかのようで、居ても立ってもいられない気分だった。「とわこさんはまだ大学生だよね?こんな大事な時期に妊娠したら、勉学に支障が出ることになるでしょう…」と悟の妻が心配しているように言った。悟も相槌を打った。「そうだ、そうだ。とわこさんはまだ若いし、学業を諦めて、うちで子供を育てるなんて、彼女はきっと嫌だろう!」大奥さまは長男夫婦の思惑を予想していた。だからこそ彼女が意地を張っても奏の血筋を残すことにこだわっていた。「とわ、奏くんの子を産んでくれるか?」大奥様は率直に尋ねた。「あなたと奏くんの子供は、将来奏くんの遺産を継ぐことになるんだよ。あの莫大な遺産で、あなた達は贅沢にくらせるわ」とわこは躊躇なく、「ええ、喜んで」と答えた。弥が奏の家業を奪うのを阻止できれのなら、彼女は何でも試す覚悟だった。それに、拒んだところで、常盤家のやり方を考えれば、無理やりにでも彼女に子供を産ませるだろう。彼女から返事を聞けた大奥さまは、満足げな笑みを顔に浮かべた。「いい子だわ。さすが私が見込んだ人だ。そとの愚かの女どもとは違うだとわかっていたよ。あの連中は奏くんが死ぬから何も手に入れないと踏んでいるのよ…愚か者め!」お茶のもてましを終えて、屋敷から出たとわこは、奏の別荘に戻ろうとしていると、途中で弥に呼び止められた。汗ばむ炎天下で、蝉の声がひっきりなしに響いていた。弥の顔を目にして、とわこは虫唾が走るのを感じた。「三浦さん、先にお土産を持って帰ってきてちょうだい」と彼女は三浦婆やに指示した。頷いた三浦婆やは、お土産を持ち帰った。周りは誰もいないことを確認して、安心した弥はとわこに向けて話しかけた。「とわちゃん、俺は傷ついたよ!もう長く付き合っていたのに、とわちゃんは一度も触れさせなかったのに…それなのにどうして、今は喜んで叔父さんの子を産むの」「彼の子を産めば、遺産が手に入る。これ以上都合のいい話はないでしょう?」彼女はわざと軽い口で返事して、弥の心を抉った。思った通り、あいつはかなりな刺激を受けたようだった。「とわちゃん、これは確かにいい考えだ!でも、いっそうのこと俺との子供を作って、叔父さんの子供だと言えばいんじゃないか?どうせ常盤家の子供だし、お祖母様が怒っても、堕胎はきっ
「そうですね、早ければ三、四ヶ月で成功するケースもあります。遅ければ、もっと時間がかかることもあります」女医者は少し間を置いて続けた。「奥さまはお若いですし、きっとうまくいくでしょう!」時はあっという間に過ぎ、一雨の後、東京はすっかり秋になった。夜、風呂上がりのとかこは浴室から出て、ベッドのそばに腰掛け、今日買ったばかりの保湿クリームを手に取った、少しつづ肌に馴染ませ、丁寧に塗り広げた。「奏さんにも塗ってあげようか!最近は乾燥がひどいのよ」彼女はそう言いながら、奏のそばに寄った。ベッドの縁に座り、彼女はクリームを指先に取り、彼の顔に優しく塗り始めた。ふっと彼の目が開いた。琥珀のように奥深い瞳は、まるで宝石みたいだった。彼の目から感じ取れる微妙な揺らぎを察した彼女は、驚きのあまりに息が詰まった。毎日彼が目を開ける姿は見ていたものの、見るたびに驚いてしまう。「動きが荒かったせいかな?力を入れていないはずなのに」そう言いながら、彼女は指を動かしつづけて、彼の頬を丁寧にマッサージした。同時に、ぶつぶつと独り言を続けた——「ねぇ、奏さん。ネットのニューズで、奏さんは彼女を作ったことがないのは、きっと体が弱いからって…けど、私は奏さんがいい体をしていると思うよ!腕も太ももも立派だし…」彼の顔に保湿クリームを塗り終えた彼女は、軽く彼の腕や太ももをポンポンと叩いた。軽い叩き方なので、彼に何か影響を与えるはずもなかった。なのに彼女は男の反応に目を丸くした——それは…何となく男の声を聞こえたからだ。「奏さん?奏さんなの?今喋った?」とわこはぱっとベッドの縁から跳ね上がり、驚いた目で彼を見つめた。男も彼女を見つめていた——今までとは全然違った。これまでの彼も目を開くけど、両目には生気がなかった。でも今の彼確かにじっと彼女を見つめていて、その瞳には感情が宿っていた!ただその感情には怒り、敵意とわずかな疑念が混じっていた。「三浦さん!」尻尾の踏まれた猫のように、とわこは素早く寝室から飛び出して、下の階へと駆け下りた。「三浦さん、奏さんが起きたの!喋ったの!本当に起きたの!」彼女の顔が真っ赤になって、耳まで赤色に染まった。心臓が激しく鼓動し、胸も激しく起伏していた。奏は確かに目を覚ました。彼が意識を取り
とわこは驚きのあまり、思わず後退してしまった。奏はまるで蘇った野獣のようだった。昏睡している時、彼からは一切危険な気配をしなかったが、その両目を開く瞬間、彼の全身から危険が溢れ出した。部屋から出てきた三浦婆やは、門を軽く閉じた。とわこの取り乱した様子を見て、三浦婆やは優しく声をかけた。「若奥様、安心してください。若旦那様はまだ目覚めたばかりで、すぐにこの状況を受け入れられないのでしょう。今日は一旦客間でお休みください。お話があるなら、まだ明日にでもしてください。大奥様は若奥様のことを気に入っていますから、きっとあなたの味方です」とわこの頭の中は混乱していた。奏が目を覚まさないまま最期を迎える覚悟ができていたのに、本当に目覚めるんなんて予想外だった。「三浦さん、私の荷物はまだ彼の部屋に…」中に入って自分の所持品を持ち出したいとわこは、主寝室のほうを覗いた。あの凶悪な目つきからして、彼は多分自分という妻を受け入れないだろうと、彼女は強く感じた。彼女はいつでもこの常盤家を離れるよう準備しないといけない。とわこの話を聞いた三浦婆やは、ため息をついた。「もし急ぎの物でなければ、明日、私が取って参りますよ」「はい。三浦さんもやっぱり奏さんのことが怖いの?」「若旦那様の元で働けるようになってからもう随分経ちました。一見怖そうな感じがしますが、私を困らせたことは一度もしませんでした」とわこは相槌だけを打って、これ以上何も言わなかった。彼女は彼の妻であったけど、厳密に考えると、今日のように直接顔を会わせるのは初めてだった。彼が敵意を抱くのも納得できる。この夜、彼女はよく眠れなかった。訳の分からない発想が脳裏に巡った。奏が意識を取り戻したことは、完全に彼女の生活を狂わせた。…翌日。朝八時、三浦婆やは主寝室から持ち出したとわこの所持品を客間へと持ってきてくれた。「若奥様、朝食の用意はできました。若旦那様がダイニングでお待ちですので、一緒にどうぞ。お話をして、お互いへの理解を深めるいい機会です」と三浦婆やが言った。とわこはためらった。「奏さんは私のことを知りたくないと思うよ」「それでも、朝食は取るべきです。行きましょう!先ほど、大奥様は若奥様のことを気に入っていらっしゃると言いましたが、若旦那様は怒りません
出血しているので、流産を防ぐ処置が必要となった。この知らせはまさに晴天の霹靂だった。とわこはパニックに陥った。「先生、もしこの子が欲しくない場合は、どうしますか」もうすぐ奏と離婚することになる彼女にとって、腹の中の子は実に間が悪かった。問いかけられたお医者さんは、彼女を一瞥した。「理由を聞いてもいいですか?世の中には、赤ちゃんがどんなに欲しくても授からない人は沢山いますよ」彼女は視線を少し下の方に向けて、沈黙を選んだ。「家族の方は?」と医者に問われた。「子供が欲しくないのも結構ですが、まずは夫婦二人で話し合ってから決めましょう」とわこは顔を顰めた。彼女がかなり困っているように見た医者は、カルテをめくりながら呟いた。「まだ21歳か!結婚はしていませんよね?」「してい…ませんかな」もうすぐ離婚するだと考えて、とわこはそう答えた。「人工流産も立派な手術です。今日決まったところで、今日中にすぐできるわけではありません。今日のオペ予定はもう埋めていますから。一旦帰って、よく考えることをおすすめします。彼氏との関係はどうであれ、子供はう無関係ですから」医者はカルテを彼女に渡した。「今出血しているので、処置をしないと、これから流産する可能性もあります」とわこの態度もふっと柔らかくなった。「先生、処置というのは?」医者は再び彼女の顔を見た。「人工流産希望でしたよね?もう気が変わりましたか?三千院さんは美人ですし、腹の子もきっと綺麗でしょう。流産を防ぐ希望なら、薬を処方します。一週間安静にしてください。一週間後まだ再診に来てください」…病院から出てきたとわこは、明るい日差しで目が眩んだ。背中は冷たい汗でじっとりと濡れ、両足は鉛のように重く感じた。今の彼女は迷っていた。どこに行くべきかも、誰に相談するべきかもわからなかった。ただ唯一確定できるのは、これは奏にのせてもらってはいけない相談だった。彼に教えたら、彼女は確実に彼の用心棒に、無理やり手術台に乗せられる。彼女は子供を産む決心をついたわけではないが、ただ今の彼女が混乱していて、一旦落ち着いてから決めようと思っていた。道端でタクシーを拾って、彼女は叔父の住所を運転手に教えた。両親が離婚した後、彼女の母親は叔父夫婦と暮らすことになった。叔父夫婦は三千