第524話

「とわこ、どうして黙ってるの？」瞳は不思議そうに言った。「はるかが妊娠していた子ども、本当に奏の子どもだったのかな？一度で成功する確率って本当に低いよ！しかも、はるかが弥みたいな最低男と一緒にいるなんて、二人は同じタイプの人間だって証拠じゃない？」

とわこの心は鋭い痛みで締め付けられ、声を絞り出すように言った。「二人が本当に付き合っているかどうか、私もよくわからない……瞳、少し疲れたから休むね……」

「うん、ゆっくり休んでね」瞳は言った。

とわこは電話を切り、ぼんやりとした目で窓の外の暗い夜を見つめた。

涙が静かに頬を伝った。

彼女は、奏がはるかと付き合っていたとき、他のカップルと同じような関係だと思っていた。

はるかのお腹の中の子どもは、何度も愛し合った末の結果だと。

なんておかしな話なんだろう！

過去に彼女が奏に抱いていた憎しみは、彼とはるかの関係に由来していた。

彼女は彼を憎み、恨み、彼を自らの手で殺したいとさえ思った。

彼が何を言っても、耳を貸さず。

彼が何をしても、彼女はただ彼から逃れたかった。

嫉妬と怨みで目が曇り、彼を敵だとしか思えなかった。

何度も彼に出会わなければよかったと後悔し、数えきれないほど眠れぬ夜に彼を呪った。

だが今、真実が彼女に一撃を与えた。

彼女の心は、まるで裂けそうなほど痛んだ。

彼はクズ男ではなく、何人もの女性と関係を持っていたわけでもなかった。

彼女が彼に言ったあの酷い言葉や、彼を傷つけた行動が、今では彼女にとって耐え難い恥ずかしさだった。

涙が一度流れた後、彼女はベッドに横たわり、ぼんやりと天井を見つめていた。

感情が落ち着き、彼女の思考は次第にクリアになった。

はるかが流産したのも無理はない。

お腹の中の子どもは、そもそも奏の子どもではなかったからだ。

だから、彼女はその子を産む勇気すらなかったのだ。

あの女は、なんて悪い奴なんだ！

子どもを中絶した日にも、あんな大掛かりな芝居を仕組んでいたなんて……

そのことを思い出すと、とわこの体は抑えきれないほど冷たく震えた。

彼女も奏も、決して愚かではないはずなのに、はるかに完全に踊らされていたのだ。

すべてが過去のことだが、彼女と奏が受けた苦しみは忘れられない。

彼女はこのままで済ますつもりはなかった。

月曜日。

三千院グ