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第288話

とわこは無表情のまま雑誌を見つめていた。

突然、雑誌が引き抜かれた。

「ここにいて嫌じゃないの?」松山瞳は彼女をソファから引っ張り上げた。「本当に運が悪い!服を買いに来ただけで、こんな嫌な奴に会うなんて」

松山瞳はわざと大きな声で話し、あからさまに小林はるかに聞こえるようにしていた。

とわこは冷静に答えた。「店がここにある以上、誰でも来れるわ」

「だから運が悪いって言ってるの!もう買わない!帰ろう」松山瞳はとわこの手を掴み、彼女を引っ張って出ようとした。

とわこは笑みを浮かべて言った。「あなた、なんでそんなに怯えてるの?」

その言葉に松山瞳は一瞬固まった。

そうだよね!

彼女、どうしてそんなに怯えてるんだろう?

別に小林はるかを怖がっているわけじゃないのに。

松山瞳はすぐに気を取り直し、棚からいくつかの服を取り、とわこと共にレジに向かった。

「他人のカードを使うなんて、何の自慢にもならないわ。しかもそんな大声で、まるでみんなに聞かせたいみたいに」松山瞳は冷笑しながら続けた。「自分のお金で買うのが本当の実力よ!」

名指しはしなかったものの、小林はるかはその言葉を聞いて、振り返った。

「おや!これはこれは、小林さんじゃない?」松山瞳は驚いたふりをし、わざとらしい表情で続けた。「小林さん、ショッピング?彼氏は一緒じゃないの?最近、彼と特に仲が良いって聞いたけど、もしかして嘘だったの?そうじゃなければ、どうしてカードだけを送り込むの?カードなんて誰でも持ってるわ、小林さん、そうでしょ?」

小林はるかの顔は、手に持っているブラックカードと同じくらい真っ黒になった。

彼女は松山瞳が全国にデパートを展開する松山家の一人娘で、かなりの資産家であることを知っていた。

また、三千院とわこが現在、三千院グループのオーナーであり、莫大な財産を持っていることも思い出した。

常盤奏は彼女にカードを与え、自由に使わせているが、常盤奏から離れたら、彼女の財力は彼女たち二人に及ばない。

店員は松山瞳がレジに持ってきた服をパッキングしていた。

「お客様、さっき3XLのサイズをお求めではありませんでしたか?これらのサイズでお間違えありませんか?」店員が注意を促した。

松山瞳は淡々と笑った。
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