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第178話

とわこは指でこめかみを揉んだ。

離婚した後は、彼のことに関心を持たなくて済むと思っていたが、どうしてこんなに心が痛むのだろうか?

彼が結菜をそれほど大事にしているのなら、どうして彼女に一途でいられないのか?

だが、すぐに気づいた。

彼女が気にしているのは、彼がどの女性と一緒にいるかではなく、彼がこんなにもクズであることを受け入れられなかったのだ。

自分が愛した人をクズだと認めるのは、自分の見る目を否定することと同じで、非常に辛いのだ。

「とわこ、大丈夫?」松山瞳の心配そうな声が耳に入った。「話さなければよかった……でも話さなくても、いずれ知ることになるわ」

「大丈夫よ」とわこは水を飲んで落ち着こうとした。「それは彼の選択。彼が幸せなら、それでいい」

「裕之が言うには、小林はるかの要求だったそうよ。彼女が結菜を治療して、結果が良かったから、常盤奏はお金を渡そうとしたけど、受け取らなかったんだって」

「説明しなくていいわ」とわこは胸を抑えながらさりげなさを見せた。「もし彼が嫌なら、誰も無理させることはできない」

「結菜の病気は今後も治療が続くって聞いたわ……常盤奏は彼女に治療を続けてもらうために、小林はるかの要求を受け入れたのね」松山瞳は事実を述べようとしたが、言い終わると自分が彼を弁護しているような気がした。

とわこはあざわらった。「いいんじゃない。それぞれが求めるものを得ているし。小林はるかが彼の浮気性を気にしないなんて、ちょうどいいわ」

松山瞳は賛成した。「そうよね。今、結菜は常盤家に住んでいるみたい。本当に変な感じ。でも彼らが気にしなければ、それでいいのよ。とわこ、クズのことはもう忘れて。これからは彼のことを話題にしないわ」

「うん。最近仕事が忙しいから、終わったらご飯にでも行こう」

「いいわね!」

……

電話を切った後、とわこはカップを持ちながら深く考え込んでいた。

彼女は小林はるかのことをあまり知らなかったが、今回のことで彼女の大胆さに気付かされた。

結菜の手術を実際には行っていないのに、それを脅しに使って常盤奏を恋人にしようとするなんて。

常盤奏に真相がバレるのを恐れていないのだろうか?

常盤奏が真実を知ろうが知らなかろうが、とわこにとっては意味がない。

小林はるかが彼を欲しがろうと、とわこは全く欲しくない。

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