第146話

周防がとわこを見た瞬間、彼の顔から平静さが消えた。

まさか、三千院グループビルを買おうとしているのがとわこだとは思わなかったのだ。

とわこの心も完全に乱れていた。なぜ常盤奏の助手がここにいるのか？

まさか……

大田が彼らに近づいてくるのを見て、マネージャーに挨拶した。「山田さん、こちらの方は？」

山田が紹介した。「こちらは常盤奏の助手、周防子遠さんです。三千院グループのビルは、当時常盤さんの指示で代わりに購入したのです」

大田がうなずき、周防子遠に挨拶した。「周防さん、こんにちは」

「こんにちは」周防は握手をしながら答えた。

「では、皆さんに紹介させていただきます。三千院グループビルを購入しようとしているのは、私の元上司、三千院太郎の長女、三千院とわこさんです」大田が彼らにとわこを紹介した。「当初グループがやむを得ず破産したため、今回三千院さんは海外で稼いだお金を使って、ビルを買い戻し、三千院グループを再建しようとしています」

とわこは周りが静まり返るのを感じた。

大田が何を言っているのか、耳に入らなかった。

ただ一つ感じたのは、これがなんと皮肉なことか！

運命はなぜこんなにも彼女を弄ぶのか！

常盤奏が、このビルを買おうとしているのが自分だと知ったら、売るだろうか？

おそらく売らないだろう。

松山瞳の言う通り、常盤奏はきっと彼女を恨んでいるに違いない。

「大田さん、山田さん、私は三千院さんと二人で話したいのですが、しばらく席を外していただけますか？」と周防が微笑んで言った。

大田はすぐに立ち上がり、とわこに向かって言った。「外で待っている」

そう言って、彼は急ぎ足で外に出た。

山田もそれに続いた。

すると、カフェにはとわこと周防だけが残された。

空気は気まずさで満ちていた。

とわこはコーヒーカップを持ち上げ、一口すすった。

周防もオリジナルのコーヒーを注文し、落ち着いた様子で彼女を見つめた。

「三千院さん、あなたは海外で勉強しているはずでしたよね？このビルを買うなんて、大分稼いだんですね」

とわこは冷静に彼を見返し、淡々と答えた。「それは私の個人的なことなので、お話しするつもりはありません」

周防子遠は鼻梁にかけたメガネを押し上げながら言った。「あなたがボスと離婚したいのなら、実はとても簡単です。彼に直接会いに行け