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第52話

さくらは美奈子の焦りと不安が入り混じった様子を見て、思わず微笑んだ。「大丈夫です。続けてください」

さくらは今夜にも京都を離れる予定だった。今日中に問題が解決しなければ、明日も明後日も美奈子が屋敷の門前で面会を求めて騒ぎ立てることになるだろう。そうなれば事態は大きくなってしまう。

さくらは美奈子が北條老夫人に気に入られていない理由を知っていた。息子を産まなかったことに加え、実家の力が弱く、持参金も少なかったこと、そして貴族の奥方としての威厳や品格に欠けていたからだ。

美奈子はさくらに対して意地悪をしたことはなく、長兄の妻としての威張った態度も取らなかった。だからこそ、さくらは彼女の愚痴を聞いてあげる気になった。

美奈子は涙を止めどなく流しながら、結婚式の混乱について話し始めた。招待客は皆逃げ出し、呼ばれた兵士たちも不満を抱えて散り散りになった。すべての責任を彼女が負わされ、夫の北條正樹までもが彼女を責めたという。

新婚初夜、葉月琴音はテーブルをひっくり返し、北條守は一度は立ち去ったものの、老夫人に知られて追い返されたそうだ。

「それだけならまだしもよ」美奈子は悔しそうに続けた。「今朝、ばあやがあの2人の寝室にハンカチを取りに行ったのだけど、初夜の血がなかったの。姑は昨夜の怒りのせいで夫婦の契りを結んでいないと思ったみたい。でも琴音は大胆にも、京都への帰路で既に関係を持ったと認めたのよ。一緒に戻ってきた将兵たちも皆知っているそうなの。姑はそれを聞いて、そのまま気を失ってしまったわ」

側にいた梅田ばあやは、顔を曇らせて言った。「そのような話は控えめにしていただきたい。お嬢様はまだ純潔なお方。こんな話を聞くべきではありません」

お嬢様の身分で、こんな不義理な汚らわしい話を聞かせるなんて。

こんな汚らわしい話を多くの人に知らせるなんて。将軍家は今は落ちぶれているが、北條老夫人は面子を重んじる人だ。お嬢様の持参金を欲しがっていたにしても、いくつもの口実を設けて、お嬢様が和解離縁して出て行った後も、人前では常にお嬢様の不孝を語っていた。

外で広まっている噂の大半は彼女が流したもので、好事家たちがそれに尾ひれをつけて、どんどん大げさになっていったのだ。

梅田ばあやはかつて将軍家で内外の采配を振るう責任者だった。美奈子は彼女を非常に尊敬していた。今、彼女の表情
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