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第425話

 「水原様が私に来るように言ったんです」越人が言った。

「彼は?」香織は尋ねた。

「水原様は今そちらに着いたばかりで、すぐには戻れません。まず私が来て、あなたを守るように言われました」越人が答えた。

香織は眉をひそめた。「本当に着いたばかりなの?そんなはずないでしょう?」

彼はすでに到着しているはずだ。

越人は目をそらした。

本来は早く着いているはずだったが、搭乗前に佐藤から電話を受けたため、圭介はフライトを遅らせた。

それで、ようやくそちらに着いたところで、戻るには時間がかかる。

圭介は水原家が決しておとなしくしていないことを知っており、ずっと彼らを密かに監視している人を派遣している。

何か動きがあれば、すぐに圭介に伝えられる。

彼は香織が危険にさらされることを心配して、越人を先に送ったのだ。

幸い、越人は一緒に行かなかったので、これで本当に厄介なことにはならなかった。

越人の視線の動きは、香織には圭介がまだ彼女に会いたくないということに映った。

「彼が来ないなら、わざわざ私を心配する必要もないじゃない!私が死のうが生きようが、彼は気にする?」

心の中にたまっていた不満が爆発した。

「奥様、誤解しないで……」越人が慌てて説明した。

「何を誤解するというの?」香織は冷ややかに笑った。「彼は私が水原家に迷惑をかけられるかもしれないって知ってるのに、どうして自分で来ないの?あなたが彼のために嘘をついてるの?彼はほんとに今さっき着いたばかりで戻れないの?彼は飛行機で行ったの?それとも自転車?」

「彼は少し事情があって遅れたんです。実は水原様は今朝になってから……」

「もういい。聞きたくない。あなたが彼に頼まれたなら、ここで待っていて」

そう言って、彼女はドアを閉めた。

ドアに寄りかかりながら、涙が自然とこぼれ落ちた。

そして必死に拭い去った。

外では越人が立っていて、ドアを叩こうと思ったが、彼女が怒っているのを考慮して思いとどまった。

彼が連れてきた人がいるので、そのまま外で待っていてもらえばいい。

部屋の中で。

香織の携帯が再び鳴った。

今度は金次郎ではなく、幸樹だった。

「何をしたいの?」

「何もしたくない。ただ、奥様に家に来てもらって、俺と話をしたいだけだ」

「あなた、頭おかしいんじゃない?」香織は直ちに罵声
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