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第8話

直人は美穂を病室まで抱きかかえて戻り、優しく寝かせてからそっと部屋を出た。

彼が慎重に足音を立てずに歩く姿を見て、胸が締め付けられるように痛んだ。

彼の後を追ってみると、車は近くのショッピングモールに向かった。

そのままあるデザート店に入り、列に並んだ。

その店は有名で、私は何度も彼に一緒に行こうとお願いしたことがあった。

でも彼はいつも嫌がって、そんなことで並ぶなんてバカだと私を馬鹿にしていた。

今になって、彼は自ら喜んで並んでいる。

彼の番になると、店員が笑顔で注文を聞いた。

直人はカウンターに身を乗り出し、優しそうに話しかけた。

「彼女、マンゴーとチェリーはアレルギーだから、食べられないんだ。

チョコレートは甘すぎるって嫌がるし、

ストロベリーは今日はもう食べちゃったんだ。他におすすめってある?」

私の心はもうぐしゃぐしゃだった。

本当に辛いと、人って笑ってしまうんだね。笑ってるうちに、涙が出てくるんだ。

昔、直人は私の好みを全然覚えられなかった。たまーにケーキを買ってきてくれたこともあるが、私が食べれない味ばかりだった。

記憶力が悪いんじゃなくて、ただ私にその価値がなかったってだけだった。

店を出た時、彼は待ちきれない様子で駐車場に向かってた。

道中ずっと、ケーキの箱を両手で慎重に守っていた。

車を停めた後も、エレベーターを待つのが面倒なのか、階段に直行した。

角を曲がった瞬間、直人が突然立ち止まったため、手が緩んでケーキの箱が地面に落ちてしまった。

ずっと大事にしていたケーキが、ぐちゃぐちゃになってしまった。

私はびっくりして、彼が見ている方向を目で追った。

暗い街灯の下、慌てている美穂の顔がちらっと見えた。

その横で、美穂の肩を抱いてるのは、私をさらったあの犯人だった。

直人の声が少し震えていた。

「美穂、なんでお前そいつと一緒にいるんだ?」

直人の顔を見て、犯人の目つきが鋭くなった。

美穂は焦って犯人の体を押した。

「逃げて、早く!」

直人は動かず、ただ美穂を見つめて、犯人が逃げるのをそのまま見送っていた。彼は、急にボロボロになった感じだった。

美穂は無理やり笑顔を作った。

「直人、聞いて……説明するから……」

まだ話の途中だったけど、美穂はまたいつもの手を使い、ふらっと倒れた。

直人は
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