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第5話

美穂の不思議そうな顔を無視したまま、直人はゆっくりと私の遺体に近づいた。

彼は白布の端を掴み、深く息を吸うと、一気にその布をめくった。

私の心は喉元まで上がり、目には涙が浮かんできた。

「直人!」

彼が私の顔をよく見る前に、美穂が突然大声で叫んだ。

直人が驚いて振り返ると、彼女は怯えた顔で彼の胸に飛び込み、震えながら抱きついた。

「直人、あの死体、すごく怖い!怖いよ、早く行こう」

私は思わず苦笑した。

今になって私の死体が怖いなんて、当時は私に死んで欲しいって言ってたくせに。

でも直人はその手に乗っかって、彼女を抱きしめ、背中を軽く撫でていた。

「大丈夫だ、美穂。もう見ないから、行こう」

去る前に、彼はこっそりと私の遺体に目をやった。

しかし、スタッフは既に白布を元に戻し、私を運んでいった。

直人に連絡がつかないため、スタッフは義母に遺体の確認を依頼した。

彼女は私の惨状を目にして、その場で気絶してしまった。

私と義母は昔から仲が良かった。直人がいつも冷たかったから、義母がそれを埋め合わせようとして、私にできる限りの愛情を注いでくれていた。

前から約束していたんだ、子供が生まれたら一緒に海に行こうって。でも、残念だけど、もうその約束守れなくなっちゃったよ。

義母が目を覚まして、まず最初に直人に電話した。

「直人、早く来て、優香が……」

彼女が言い終わらないうちに、直人が面倒くさそうに話を遮った。

「母さん、今大事な仕事があるんだ。何かあったなら後で話してくれ」

義母は泣いて、息もできないほどだったが、何か言おうとした瞬間、直人が先に電話を切った。

おそらく、義母が家に戻って来いと言うのを恐れたんだろう、直人は携帯の電源を切った。

智也もその後すぐに駆けつけてきた。

180センチ以上ある男が、家に入ってきた瞬間、私の遺体の前に跪いて、顔を埋めて泣いていた。

涙で言葉が出てこないのか、私の傷だらけの腕を握りながら、自分の顔を叩いてた。

「優香、俺が悪かった……直人のクソ野郎がお前を傷つける姿を見て見ぬふりした、止めるべきだったのに……」

「あの日、俺がもう少しお前に頑張って話しかけていたら、お前は死ななかったかもしれないのに……」

彼の泣きじゃくる姿を見て、私も胸が張り裂けそうだった。慰めたかったけど、もうどうしよ
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