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拉致され、夫は夢の女を守るために私を死に追いやった
拉致され、夫は夢の女を守るために私を死に追いやった
著者: 肉が大好きな怪獣やん

第1話

「優香、お前、奴らと行け」

島田直人は私を指さすと、目で合図をして犯人のところに行けと言った。

「今何て?」

私は、彼が間違って指をさしているのではないのかと思って、疑問だらけの顔で彼を見つめた。

でも、彼は揺るがない目つきで、私を一瞥もせずにそう言い続けた。

「俺は美穂を先に助ける。お前が彼女をここに呼ばなかったら、こんなことにはならなかったんだぞ。美穂をお前の代わりに苦しませるわけにはいかないだろう?」

二時間前、直人から城外で私を呼び出すメッセージが届いた。しかし、着いてみたら、そこにいたのは直人の憧れの女性だった。

私は鼻で笑って、その場を去ろうとしたが、突然誰かに口を押さえられ、引きずられてしまった。

手が後ろで縛られて初めて、自分が誘拐されたことに気付いた。

私と一緒に縛られていたのは、鈴木美穂だった。

私は直人が絶対にすぐに来て助けてくれると思っていた。

だって、私のお腹の中には彼の子供がいるから。冷戦状態が一ヶ月以上続いていても、彼は絶対にすぐ来てくれると信じていた。

でも、私の考えは甘すぎた。

直人が焦って一人で来た時、犯人は美穂の首にナイフを当てていた。

彼の目は一瞬で赤くなって、犯人に低い声で美穂を解放してくれと頼んでいた。

でも、犯人は無反応で、私を直人の方に突き飛ばした。

私は痛むお腹を押さえて、まず病院に連れてってくれと頼んだ。

でも彼は冷たい顔で、私を美穂と引き換えにしようとしていた。

私の目には涙が滲んで、ただただ彼を黙って見つめていた。

「どういう意味?今日は……」

話の途中で、誰かの叫ぶ声に遮られた。

私が振り返ると、ナイフの先が美穂の肌をほんの少し切り裂いて、血がほんの少し滲んでいた。

ただそれだけのことで、直人は完全にパニックになって、犯人に美穂を解放するよう懇願してた。

私は自分の掌を強く掴んで、必死に声を押し殺して泣き出さないようにしていた。

私は心臓病を患っているので、彼が助けてくれなければ、私もお腹の子も危険だ。

生きたいという一心で、私はプライドを捨てて、地面に跪いて彼に懇願した。

「直人、私を見捨てないで。お腹の中にはあなたの子供がいるの。お願いだから……」

「優香、そんな嘘をついて俺を騙そうとするな!

美穂はお前とは違う。彼女はこれから嫁に行くんだ。汚れちゃ困るんだ」

彼は冷たい目つきで私を見ていた。それはまるで、10年間一緒にいた妻じゃなくて、赤の他人を見るような目だった。

「心配するな。こんな犯人、俺はたくさん見てきた。奴らは金か女が目的なんだ。お前がちゃんと協力すれば、危険はないさ。

俺の同僚がすぐに助けに来る。それまで何があっても、俺はお前を嫌いにはならないさ」

彼は私の肩に手を置き、顔を私に近づけて、無表情で囁いた。

「それに、お前、そもそも綺麗じゃないだろ。昔、悠斗とあんなことしてたんだ。それでも俺はお前を嫁にしたんだぜ?」

彼の言葉に、私はその場で凍りついて、震えが止まらなくなった。

「違うの、私と悠斗は……」

彼は私に説明する時間もくれず、イラついて私をまた犯人の足元に突き飛ばした。

私は抵抗しようとしたけど、冷たいナイフの先が首元に当てられて、ただ見ることしかできなかった。直人が美穂を連れて立ち去るのを……。

直人が美穂を優しく抱きしめて慰めている間、私は犯人に髪を掴まれて、車に引きずり込まれた。

頭皮が引き裂かれるような痛みで、私は思わず悲鳴を上げた。

犯人が手を上げて、思いっきり私の顔に平手打ちを食らわせた。

「もしまた騒いだら、殺すぞ。いい加減にしろ!お前の旦那はお前のことなんて見向きもしないくせに、何でそんなに可哀想ぶってんだ!」

私は直人が美穂を守りながら、彼女を車に乗せて、アクセルを踏み込んで去っていくのを見ていた。

ずっと張り詰めていた心が、ついに、完全に壊れた。

私は唇を噛み締め、絶望的な状況の中、目を閉じ、犯人に車の中に押し込まれた。

彼は、私が怪我をしているかどうかも確かめず、振り返って見ることすらもしなかった。

この瞬間、私はようやく気づいた。私と子供、二人の命を足しても、美穂のくだらない貞操には到底及ばないってことに。

私は10年間彼を愛してきた。どんな氷の山だって、この私が溶かせると思っていた。

それなのに、彼はこんなにも簡単に私を危険にさらし、私のことを一度も見ようとしなかった。

完全に意識を失う前に、最後に彼が去っていく方向を見た。

思わず、口元に苦笑を浮かべた。

彼は知らないに違いない。誘拐なんて、ただ私の命を奪うために仕組まれた茶番に過ぎないということを。

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