共有

第3話

旭はポケットに手を突っ込み、私の前に歩み寄り、片手を上げて軽く私の頬を叩いた。

彼は歯ぎしりしながら言った。

「撮影現場の火事、お前が絡んでるに決まってる。いずれ俺が真相を突き止めて、お前を自らの手で刑務所に送り込んでやる」

私は微笑んで頷いた。

「いいわ」

「全部私がやったの。今までごめんなさい、どうしたら許してくれる?」

一瞬の驚きを見せた旭の目は、曇りを帯びたまま暗い光を宿していた。

彼は振り返り、引き出しから一冊の書類を取り出した。明らかに準備していたものだ。

表紙には「臓器提供同意書」と書かれてあり、彼は私に死後、心臓を和沙に提供するよう求めていた。

「これにサインすれば、過去のことはもう水に流してやる」

彼は斜めに私を見つめ、私の反応を期待しているようだった。

「和沙には傷つけないわ。だから私にも二度と干渉しないで」と私は要求を伝えた。

「もちろんだ」

旭はあっさりと答えた。

私はすぐにサインした。

旭の表情には、一瞬驚きが浮かんだが、奇妙な表情で私を見送った。

「兄さん、これでもう最後だ」

振り返って彼をじっと見つめると、旭は顔をそむけて居心地悪そうにしていた。

「もし母さんが天国で見ていたら、自分を追い詰めた人を母親と崇めている兄さんを見てどう思うでしょうね」

旭は返す言葉もなく、徐々に怒りがこみ上げてきた。

「お前が俺に説教する資格がない」

私は足早に歩き出し、彼の怒りの声を無視してその場を去った。

「これで彼との関係も清算できたかな?」と独り言をつぶやいた。

しばらくすると、システムから返答が来た。

【その通りです、ご主人様。】

【潮見旭は探偵を解雇しました。ご主人様は自由の身となりました。】

次に向き合うべきは、有川――この世界での私の父親だ。

元々、親子の愛情は恋愛よりも簡単に攻略できると思っていた。

特に、親からの愛情を得ることは。

だから、有川を最初の攻略対象に選んだ。

素直で従順な娘を演じ、どうにかして彼に懐いてた。

しかし、彼の好感度は常に50%の辺りで停滞し続けた。

進学校に合格した時も、ようやく60%に上がった程度だった。

和沙の存在を知るまでは。

彼女は何もせずとも、有川から無限の寵愛と寛容を享受していた。

システムは、有川が三人の中で最も攻略が難しいと教えて
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status